──YOASOBIやAdoなど、今を象徴するアーティストたちは、“CD”のリリースにこだわらない。主戦場はサブスクにおける再生回数だ。変わりゆく価値観によって、音楽レーベルは大きな変化を求められている。また、コロナ禍だからこそ見えた音楽の新しいカルチャーとは一体──。
大規模な広告展開の影響か、じわじわと音楽サブスク界で睨みを利かせてきたYouTube Music。さすが天下のグーグル傘下。(写真/Getty Images)
数々の大物アーティストがサブスクにて過去音源の配信を行う昨今、今年5月にはついにB’zが全楽曲のサブスク配信を解禁し、ランキングの上位を独占。彼らの全盛期を知らない若い世代までもB’zの曲を聴くきっかけにつながり、改めて同サービスのパワーに音楽業界全体が圧倒される状態が続いている。
その一方で、レコード会社のベテランスタッフにはサブスクに対していまだに強いアレルギー反応があり、根強いCD信仰も残っているという。そこで今回はメジャー/インディレーベルのスタッフを中心に話を聞き、サブスクおよび、CD生産に関する社内事情や、コロナ禍でアーティストたちが従来のような活動が行えない中、彼らやレーベルが取るべき戦略なども含めて、音楽業界自体が今後進むべき方向について考えてみた。
まずは各レーベルにおけるリリースの現状について、大手メジャーレーベルに勤務するスタッフA氏が語る。
「各アーティスト担当に差異はありますが、会社全体の雰囲気でいえば、いまだにCDありきの制作やプロモーション戦略が横行しています。利益のメインがサブスクに移行している部署もありますが、その隣の席では『オリコン1位を目指すぞ!』とか言ったりしてるくらいですから。完全に時代遅れです」
老舗インディレーベルに勤めるB氏が続ける。
「弊社の売り上げの比率は、CDとサブスクで9対1前後。基本的に所属アーティストがサブスク向きじゃない、という事情もあるのですが、社内でもサブスクは軽視されがちです。いまだに『サブスクは1再生が1円以下、CDであれば1枚売れれば3000円。だったらCDのほうが利益率が高い』のような発想です。しかし、ジャンルによってはCDを作らずに配信のみというアーティストも多いので、CDショップも自動的に扱う商品が減り、店頭で売り場の展開すら満足にできず、話題の最新作が陳列されていないという悪循環に陥っています」