――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。
今月のテクノロジー『メイブン』
2013年に誕生した、黒人起業家のディシャン・イミラが創業したスタートアップ。黒人女性たちが安く、良質なウィッグをヘアサロンで買えるプラットフォームを作り、見えざる1兆円市場を掘り起こした。本社はカルフォルニアのオークランドにあり、かつてラッパーの2パックも暮らした、黒人カルチャーの中から生まれた。
「米国は、もっとブラウン(茶褐色)になる。これは超大切なことだ」
先月、米国ロサンゼルスに住んでいる、アフリカ系アメリカ人(黒人)の投資家にインタビューをした。名前を、マーロン・ニコルズという。
彼が経営しているのは、いわゆるスタートアップに投資をするVC(ベンチャーキャピタル)の一種であり、これまでなかなかお金を集められなかった、マイノリティ人種の創業者たちにスポットライトを当てているのが特徴だ。
シリコンバレーに住んでいるとわかるのだが、ここはスタンフォード大学やハーバード大学を卒業した白人であったり、アジア人たちがゴロゴロしている。一方で、黒人の創業者を目にすることは、ほとんどゼロに近い。
5年以上もGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の取材をしてきたが、これまでインタビューした相手の多くが、白人もしくはアジア人であり、記憶の限り黒人は1人もいなかったように思う。
そんな状況に風穴をあけるように、マーロンはとてもおもしろいマイノリティ出身の創業者であったり、マイノリティを対象にしたサービスを掘り起こしている。
そのひとつが、黒人女性たちに安くて、良質なウィッグ(かつら)を売りまくるプラットフォーム「メイブン(Mayvenn)」だ。
実はアフリカ系の女性たちは、クルクルとカールしている髪質が特徴であるため、ヘアケアにとてもお金や時間をかけることで知られている。