――SNSでの誹謗中傷が問題として取り沙汰される昨今。こと、犯罪に置いてはあらぬ方向で、これが活発になるケースがある。犯罪被害者や、その家族、関係者に対する誹謗中傷がなぜか多発しているのだ。この事象はすでに、マンガなどでも題材として取り沙汰されるほどに問題化しつつある。
『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)
2019年9月、山梨県道志村のキャンプ場で小1女児・小倉美咲ちゃんが行方不明になった事件は、全国的なニュースとしても報道され、大きな注目を集めた。必死の捜索も虚しく美咲ちゃんは現在まで発見されておらず、母親のとも子さんは、ツイッターやホームページで情報発信をしながら美咲ちゃんの発見につながる情報を求め続けている。
今年4月20日、とも子さんは司法記者クラブで記者会見を行った。だが、この記者会見の趣旨は、美咲ちゃんの情報に関する内容ではない。それは、とも子さんのもとに寄せられる誹謗中傷の書き込みに対して提訴を行うという内容のものだった。ツイッターアカウントには、全国からの多くの励ましの言葉に混じり「母親が犯人」といったバッシングが浴びせられたほか、ブログ記事において「親が関与し人身売買、臓器売買が真相だろう」なる投稿を行う人物もいたという。
近年社会問題化している、ツイッターをはじめとするSNSにおける誹謗中傷。それは、犯罪の加害者のみならず「被害者」に対してまで牙を剥いている。いったい、なぜ、人々は誹謗中傷を浴びせるのか? そして、なぜ犯罪被害者がバッシングの標的となってしまうのだろうか? そのような疑問を解きほぐすために、まずは、4月に改正案が可決されたばかりの、プロバイダ責任制限法(以下、プロ責法)の内容から見ていこう。