――「奴隷労働」ともいわれる外国人労働者。だが、私たちはやりたくない仕事を外国人に押し付けているだけで、もはや日本経済にその労働力は欠かせない――。気鋭のジャーナリストが“人手不足”時代のいびつな“多文化共生”社会を描き出す。
約7万4000人の人口を抱える佐賀県鳥栖市。九州の物流拠点として機能している都市である。(写真/筆者、以下同)
ひとつのラインに12人が立つ。胸の高さ程度を、ベルトコンベアが走る。空のプラスチック容器が、次々と流れてくる。
最初の9人が、ひとりずつ決められた量の具材を容器に詰める。
レタス、キャベツ、ブロッコリー、海老、蒸し鶏、カニカマ、スイートコーン、サラダチキン、ソース。
残る3人は、別の作業をする。容器にフタをはめ、金属探知機にかける。シールを貼る。箱に詰める。
1時間の休憩をはさみ、仕事は午後8時から午前7時半まで。箱詰めされたサラダは、大手コンビニエンスストアに出荷される。ラインに立つ12人は、すべてベトナム人技能実習生だ。
ラインの10番目に立つ女性Aさん(20歳)は、こう話す。
3月、北海道から鳥栖市内に引っ越した専門学校生のフックさん。
「容器から具材がはみ出すこともあり、フタをする作業が一番大変なんです」
Aさんは2019年4月から、佐賀県鳥栖市の食品製造工場で働いている。85年に開通した市内の九州自動車道「鳥栖ジャンクション」は、九州一円に半日以内で到達する「九州のヘソ」だ。その立地の良さから、鳥栖インター周辺に物流倉庫や食品製造工場が集中し、商工団地が形成されている。
ベトナム出身の技能実習生Bさん(27歳)も、17年5月から鳥栖市内の食品製造工場で働く。働き始めて4年目になるが、来日当初から仕事内容は同じだ。就業時間は午前9時から午後6時。ベルトコンベアに流れてくる加工食品の中から、形の悪い不良品を取り出し、バケツに入れる。その繰り返し。
大きな機械音で会話もできず、ベルトコンベアを止めるわけにはいかないため、休憩や昼食も交代して取る。
「周りもみんなベトナムの技能実習生で、日本語が上達しません。帰国後も給料の高い日系企業などで働きたい。今は週に一度、ボランティアの日本語教室に通っています」(Bさん)