――立憲民主党・小川淳也衆院議員の歩みを追った『なぜ君は総理大臣になれないのか』。本作が政治家を題材にしたドキュメンタリー映画としては異例のロングラン上映&ヒット作となった理由は、時に「政治家に向いていない」と言われる小川議員の政治家としての“稀有”な姿勢にあるだろう。そんな彼は現在の日本の政治状況をどう見ているのか。
(写真/西村満)
『なぜ君は総理大臣になれないのか』
[DVD]監督:大島新/出演:小川淳也/販売元:マクザム/価格:4400円(税込)/4月30日発売予定2003年、総務省を辞めて「ただ、ただ、この政治。なんとかしたい」という思いから、家族の反対を押し切って政治家を目指した32歳の若者・小川淳也。その衆議院選挙初出馬からの17年間を追う。民主党からの初当選、政権交代実現から再びの野党転落、民進党の分裂と希望の党からの選挙戦――愚直なまでに真摯に政治に向き合いながらも、正直で権力欲がない小川は政界の権謀術数に翻弄されていく。正義感と理想に燃える彼はなぜ総理大臣になれないのか。ドキュメンタリー作家・大島新が日本政治の未来を問う。
――2003年11月の衆院選に小川さんが32歳で初出馬したときから政治家としての17年間を撮り続けた映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、全国81館まで上映拡大、半年以上のロングランとなりました。小川さんの政治家としての姿勢に注目が集まるきっかけにもなったと思いますが、ご自身ではどのように受け止めていますか。
小川 国会でどれだけがんばっても、届く範囲はやっぱり限られているんですよね。ところが、映画として上映されると、これまで届かなかったところまでどんどん広がっていく。映画というメディアが持つ力に驚きましたし、その波及効果にも感動を覚えました。
――映画では「日本の政治を変えたい」という初心をストイックに貫きながらも複雑怪奇な政治の世界に翻弄され、挫折を味わい、苦悩される姿も映されています。
小川 映画の内容についてはすべて監督に委ねて、製作にも編集にもまったく関わっていません。公開後も中立性を保つために、ずっと見ないようにしていました。昨年末になってようやく初めて見たのですが、率直に「こんなバカなやつがいるんだな」と思いましたね(笑)。私って正直で純粋で一本気で、なんでもさらけ出してしまう人間なんだな、と。これでよくここまでやってこれたなと思いましたし、同時にそれは支援者の皆様と家族のおかげだなと深い感謝の念を改めて覚えています。あの映画が多くの人に支持していただけたのは、やはり政治不信が広がっている中で、私のバカ正直な姿勢がある種、一服の清涼剤のように感じられたからかもしれません。ただ、私は逆説的な受け止め方をしています。私のこだわってきたスタイルが特別なものではなく、当たり前のものになるよう、政治の世界を変えていかなくてはならない。そのための新しい戦いが始まったと感じています。
――『なぜ君は総理大臣になれないのか』というタイトルも印象的です。映画の中では、監督やご両親からの「政治家に向かないのではないか」という発言もありました。
小川 「政治家に向かない」という言葉については、実際にその通りだと思います(笑)。ただ、もともと私が政治の世界に行くことに大反対していた妻が、こういうことを言ってくれたことがあるんです。「あなたは“今の政治の世界”に向いていないだけ。おかしくなっている今の政治を変えたいと言って政治家になったのだから、筋は通っている」と。政治家に向いていないという言葉は、確かに私の弱みを突いていますが、同時に最大の褒め言葉、誇りでもあります。それは私が永田町の空気に染まらず、正気を保ち続ける努力をしてきた証左だからです。大島新監督は撮影中のある時期から「これは小川さんを問う作品であると同時に、私たちに対する問いかけでもあるんだ」ともおっしゃるようになりました。このタイトルは確かにそういった二面性も持たせていると感じます。