――今は気軽に街角で受けられるようになった新型コロナウイルスのPCR検査だが、民間業者が行う検査には、さまざまな問題があり、この検査によって、国内の医療体制が混乱することも懸念されている。中国や台湾のように感染を抑え込めなかった日本の現状は、国のありようそのものを問うている……のではないだろうか。
街で告知されるPCR検査の案内看板。
すでに我々は、1年以上も“コロナ禍”という世界を生きている。1都3県に出されていた緊急事態宣言は3月21日に解除されたものの、その後の感染者数はむしろ増加。第4波の到来ともいわれる状況が続いている。
そんな中、増えているのが街中で受けられる民間企業が提供するPCR検査だ。たとえばある総合商社が行っているPCR検査は、新宿や池袋などの街角でビルのワンフロアを使って行われている。場所はキャバクラや風俗店などが軒を並べる歓楽街と密接していることが多く、水商売や風俗、ホストクラブなど日頃から「濃厚接触」にさらされる職業の人たちがアクセスしやすい場所が選ばれている……ということだろうか。エリア内には、定期的にPCR検査を受けることを勧める手書きのボードも掲げられている。
試しに筆者が受けてみたところ、検査料は2500円程度。事前にネット予約したスマホのメールを見せれば、1枚の紙と検査キットを渡されるだけで、問診などは一切ない。紙には新型コロナウイルスに感染したことがあるか、現在、発熱、喉の痛み、味覚異常といった症状があるかどうかだけを、○×で答えるようになっている。壁際のブースで自ら唾液をストローで採取し、容器に入れて提出すれば、検査完了だ。翌日にはメールで検査結果が届くのだが、検査結果は100%の精度を保証するものではない、という注意書きが添えられていた。
振り返れば、2020年に新型コロナウイルスが蔓延し始めた当初、日本では、PCR検査を受けるためには、「37・5度以上の発熱が4日以上」ないと受けられないという、アクセスしづらい状況が続いた。それがいつの間にか民間の企業が続々PCR検査に参入。ウェブ広告を見れば自宅で唾液を採取、送付するだけの検査も登場している。検査の間口が広がったことは本来は喜ばしいことだろうが、検査業者を見ると民間企業のほかにも美容外科や皮膚科のクリニックがこれらの検査を行うなど「なぜこのクリニックが?」と疑問を感じるところも少なくない。一体このようなPCR検査はどの程度の信頼性があるのだろうか?