――「よくわからないけど、ネットで流行っている」という見方をされているVTuberは、現在、海外で人気を拡大しつつある。例えば昨年のYouTubeのスーパーチャットの世界1位は、総額1億5000万円を叩き出したVTuberだった。なぜ、今これがウケているのだろうか?
昨年9月にデビューした英語圏向けのVTuberグループ「ホロライブEnglish」。5人中2人がすでにチャンネル登録者数100万人を超えており、残りの3人も年内には100万人を突破する勢い。
CMや深夜のバラエティ番組などで、見かけることが増えてきた印象のあるVTuber。2016年に先駆けであるキズナアイが登場して以降、その総数は増え続け、現在では1万3000ものVTuberが存在しているという。
数的にはブームとなっているVTuberだが、その言葉しか知らない人は今も「アニメっぽい3D映像で歌ったり踊ったりして、その動画をYouTubeにアップしている」というイメージしか持っていないだろう。
確かにキズナアイが登場した頃は、そのような活動をする者が多かったものの、その後、VTuberの活動は生配信主体にシフトしている。稼ぎ方も広告収入中心のモデルから、ファンを相手とした直接的なマネタイズが強まり、20年のYouTubeの投げ銭機能スーパーチャット(以下、スパチャ)の世界ランキングではさまざまなVTuberがランクイン。1位に輝いた「ホロライブ」(後述)の桐生ココは1年間で総額1億5000万円ものスパチャを視聴者から集めた。
現在のVTuber業界(以下、VT業界)は市場的には「儲かる」状況であり、ゆえにVTuberを多数擁する企業も存在する。19年には月ノ美兎などを擁するバーチャルライバー事務所の「にじさんじ」(いちから株式会社)が急成長。20年には伊藤忠商事など4社から約19億円の資金調達を実施し、過去に実施した調達と合わせた累計調達額は30億円超となった。また、昨年は「ホロライブ」(カバー株式会社)の躍進も目立った。
さらに、海外の熱心なファンも少なくなく、配信を見ると英語などのコメントも多く確認でき、熱は日に日に高まっている状況だ。
もはや「ネットの流行」という域を超え、対外ビジネス化しているようにも思えるVT業界。国内メディアが取り扱い方をよくわかっていない間に、海外で躍進したのはなぜか? 本稿ではVT業界の今を追いたい。