――多くのアメリカ在住者が「悪夢の4年間」とまで言ったトランプ大統領の時代が1期4年で終わりを迎えた。一体、トランプという型破りの大統領は何者だったのか? それを読み解く鍵が、ネットフリックスで配信されている何本ものドキュメンタリー作品に隠されていた。
監督:ダニエル・ディマウロ他/17年
あるいは、それは230年以上のアメリカの歴史において、最悪の1日だったかもしれない。
今年1月6日、バイデン次期大統領の当選を認めようとしないトランプ支持者たちが連邦議会議事堂に乱入。議事堂内ではトランプ支持者や警官など5人が死亡するなど、米国史上前代未聞の異常事態に陥ったのだ。
長くニューヨークに在住してきた、映画作家の想田和弘氏は、この出来事について、次のように話す。
「本当に異常な事態でした。アメリカの民主制の総本山ともいえる議事堂が不法に荒らされたわけですから。まあ、議事堂内に入ったトランプ支持者たちが占拠したのはいいものの何もやることがなくて、セルフィーを撮っていたというのはトホホな感じですが、それにしても、この出来事は長くアメリカに暮らしてきた者としては衝撃でした」
そもそも、今回の出来事を引き起こしたのは、トランプ前大統領が、大統領選挙におけるバイデン氏の勝利を、選挙で不正が行われていたからだと主張し続けたことがきっかけだった。ツイッターで陰謀論を主張するトランプ氏の言葉を、支持者たちは信じきっていた。想田氏が続ける。
「本当に危ないところだったと思います。もう少しでアメリカの民主主義が崩壊するところでした。トランプ前大統領は、選挙結果を覆し無効化することで、自分が終身の“国王”のような存在になることを本気で目指していたと思います。建国以来守り続けていたアメリカという国の仕組みが崩壊してしまう事態まで、首の皮一枚でしたよね。そのくらいの事態だったと、私は考えています」
想田監督がここまで言うのは、それほどトランプがあらゆる意味で型破りの、トンデモない大統領だったということなのだが、それにしてもアメリカの分断を加速させたトランプ大統領の1期4年間とは、一体なんだったのだろうか。そこで今回は、主にNetflix配信のドキュメンタリー作品を中心に、この4年間を検証する鍵となる映像作品をチョイス。さらに、その作品を足がかりとしながら、トランプ時代が映像メディア全般に与えた影響についても考えてみたい。