――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉
自己啓発本として期待するとブチ切れ、そうでなければ肩の荷が軽くなる本。あのキンコン西野ですら頭が上がらない遊撃の思想。
今回の特集はNetflixとのことで、『ベスト・キッド』続編の『コブラ会』は絶賛されているが、80年代B級洋画のチープな記憶を掘り起こしながら連続ドラマを観るのは、「映画秘宝」系のボンクラ以外には案外、敷居が高いよな、と思っていたら、その「映画秘宝」現・編集長が炎上していた。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」での発言内容をTwitterで批判した一般人に公式アカウントから恫喝DMを送りつけたのだ。以前、「映画秘宝」編集部のアニメ嫌いから「オトナアニメ」が枝分かれした経緯を書いたが、映画マニアの排他的でホモソーシャルな体質が剥き出しな雑誌としては「映画芸術」と双璧なので、さもありなんとは思う。サブカル系の文化人がエゴサーチから一般人を攻撃するケースは、2018年に新宿の喫茶店・ベルクの炎上事件があったし、映画サブカル界隈のパワハラ事案は松江哲明の『童貞。をプロデュース』事件や、アップリンクやラピュタ阿佐ヶ谷の雇用問題で日常茶飯事だが、彼らの倫理観はそうそう変わらない。正しいかどうかはさておき、杉作J太郎や宮本浩次のように、時代意識のアップデートに意欲的な中年男性は成功による安定を信じていないのだろうが、普通は執着する。
Netflixへの食い足りなさもそこにある。マニアな中年男性文化圏を意識しすぎているのか、最初に話題となった日本オリジナル作品が『DEVILMAN crybaby』で、次は『全裸監督』。オリジナルアニメ部門のプロデューサーが『攻殻機動隊』シリーズの元・脚本家だからか、どうにも古臭いセンスのSF系企画が多く、これもかなり辛い。知人のSF系編集者は「アニメ化のチャンスですよ!」と息巻いていたが、勘弁してくれ。