――1969年から半世紀にわたり放送されている『サザエさん』(フジテレビ系)。読者のほとんどが知っているであろう国民的アニメだが、磯野家の絶対的な家父長として君臨する波平は、家事・育児をまったくしないくせに「バカモン!」と威張り散らす。こうした時代錯誤なジェンダー観のアニメは、今の子どもに見せて問題ないの?
(絵/川崎タカオ)
毎週日曜日の午後6時30分からフジテレビ系列で放送されているアニメ『サザエさん』。2020年10月11日には放送51周年を迎えた国民的人気アニメだが、近年、特にSNS上ではその内容に批判が集まることも珍しくない。例えば20年5月にも、作家の川上未映子が自身のツイッターで以下のような投稿をしている。
「昨夜偶々みた『サザエさん』2年前の再放送。家父長の波平が、成人であるサザエに外出時のミニスカートを禁じ抑圧コントロールするそばで、女児のパンツは丸見え。普段はみないし、もはや時代劇だとわかっていても演出の怠惰と鈍さに辟易。タイトルは『お父さんにはナイショ』」
「正しいか正しくないかではなく単に『手抜き』だと言いたいわけだけど、こうした人物造形やエピソードや演出が国民的アニメとして現在に放送されても大多数の人々にさしたる違和を感じさせないのは『サザエさん』の描く人間関係が『昭和だ』と笑われながらも未だ『よくある普通の風景』だからですね」(いずれも原文ママ)
川上が指摘するように、『サザエさん』における“昭和”な設定・描写は、現代の価値観にそぐわないが、それでいて許容されてしまっている部分もある。
また、磯野家は波平を頂点とする家父長制であり、その中で波平とマスオはサラリーマン、フネとサザエは専業主婦という点において性別役割分業観も色濃い。特に波平に関しては、家事をするシーンはほぼなく、カツオを「バカモン!」と(時に理不尽に)叱りつけたりもする。子どもへのジェンダー教育が重視されつつある昨今、家族が集まる日曜夜のお茶の間に向けて放送することは適切なのだろうか――。