サイゾーpremium  > インタビュー  > 【いとうせいこう】乱痴気パーティ映画の強度を解く
インタビュー
清々しくデタラメな映画をいとうせいこうが語る

【いとうせいこう】「不要不急の映画こそコスパが高い」ドラッグでブッ飛ぶ乱痴気パーティの傍観者

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――「観たら、キマる」とうたう山本政志監督の最新映画『脳天パラダイス』は、とにかくハチャメチャだ。出演者のいとうせいこうが、デタラメへの敬意を込めて同作の強度を解く。

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(写真/有高唯之)

 清々しいくらい無茶苦茶な映画である。見知らぬゲイカップルの結婚式が始まったと思ったら盆踊りになり、いつの間にか葬式にすり替わるのだから。そんな映画に出演するひとりが、いとうせいこうだ。

「まさに、清々しさがこの映画の一番いいところ。親子が出てきたら和解のシーン、恋人が出てきたら別れのシーンというふうに、今はあらゆるメディアで感動に収束させるウイルスがまん延している。僕も気づかないくらい洗脳されていたけれど、まったく意味のない映画の風通しの良さを感じました」

 本格的な映画出演は、意外にも初めてとのこと。『闇のカーニバル』(81年)や『ロビンソンの庭』(87年)など日本映画界に足跡と爪痕を残してきた山本政志監督の『脳天パラダイス』で、不甲斐ない父・修次を演じる。破産の末、豪邸を手放すことになった引っ越し当日、ヤケになった娘のツイートが拡散され、奔放な元妻をはじめとする招かれざる客が次々と集まってくる。冒頭こそ家族の再生物語のような雰囲気が漂うが、安直な予想をあざ笑うかのごとく、セックス、ワイヤーアクション、ミュージカル、怪獣、スプラッタありのカオスが待ち受けている。

「不況になるとコスパを求めがちで、感情が動いたほうがコスパが高いと思ってしまうんです。だけど、そんな硬直したものの見方はもともといらなかったはずだし、不要不急のほうが素晴らしいのに、“要で急”なことだけをよしとするのは貧しさの表れ。よく企画が通ったと思うけど、こういう映画こそ本当の意味でコスパが高い」

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