――ここ数年、日本でもっとも話題のラッパーといえば、舐達麻の3人をおいてほかにはいない。注目を集めるのは第一に、自身と大麻をめぐる現実について前例がないほど“直接的”にラップするからである。だから、今回の特集には欠かせないこのヒップホップ・グループに、大麻について大いに語ってもらおう。
(写真/西村満)
「たかだか大麻 ガタガタぬかすな」――。こんな単刀直入なラップのリリックが、2018年後半から19年にかけてネット・ミーム化して大きな話題を呼んだ。埼玉県熊谷を拠点とする、88~90年生まれのラッパー3人(BADSAIKUSH、DELTA9KID、G-PLANTS)からなるヒップホップ・グループ、舐達麻。彼らが18年10月にYouTubeにアップし、20年11月初頭時点で650万回(11月初頭時点)の再生回数を超える「LIFE STASH」という曲で、BADSAIKUSHが放ったパンチラインだ。
その楽曲だけではない。日本では法的に規制されている大麻への愛、あるいは大麻を売りさばいた経験や過去の犯罪行為などについて詩的に綴る彼らの曲のミュージック・ビデオは、その後もYouTubeに公開されるたびに大きな反響を呼び、軒並み数百万回の再生回数を超える。今もっとも勢いのある日本のヒップホップ・グループで、彼らの人気は10代の中高生にまで拡大している。
だが、舐達麻はただ無闇に犯罪を助長しているわけではない。彼らには大麻に向き合う真摯な姿勢と持論がある。そこで今回、本人たちを直撃し、独自の大麻論を熱く語ってもらった。
(写真/西村満)
――大麻文化との出会いから語ってもらえますか?
BADSAIKUSH(以下、B/上記写真中央) まず、俺が中学の頃(02~05年)は地元の埼北(埼玉県北部)に大麻を吸う若者の文化なんて浸透していなくて、むしろ「ダメ。ゼッタイ。」という警察による薬物乱用防止のキャッチコピーのほうが浸透していた。
G-PLANTS(以下、G/同右) そういう時代だったよね。覚醒剤、コカイン、大麻とかすべてが同列に“イケナイ麻薬”で、一度でも手を出したら戻って来られなくなるって刷り込みがあった。
B 指名手配中のヤクザの先輩が、俺の家にシノギのためにさばいているクサを大量に置いている時期があったんです。中学生の俺はまったく関心を示さなかったけど、たまたま一緒に遊んでいた、大麻を吸ったことのある1個上の幼なじみの女が「吸いたい」って言いだして。それで、その女と小学校から一緒の中国人の友達を加えた3人で初めて吸った。最初はキマったかどうかわからなかったけど、テレビのリモコンをじっと見つめていると、「なんでボタンがこんなにあるんだろう? 4つぐらいでよくねぇか」って考えが浮かんで。日常で何気なく見ているモノや光景を、生まれて初めてそれまでと異なる視点でとらえる経験をしたのが大きかった。
DELTA9KID(以下、D/同左) 俺は、大麻について歌う日本のレゲエを聴いていたので、「大麻は悪いものじゃない」っていう認識は持っていました。それで先輩から大麻を買って、ひとりで吸ってみたんですけど、キマらなくて。