サイゾーpremium  > 特集  > 政治・経済  > 【第2次ボカロ小説ブーム】の内実

――ヨルシカ、YOASOBI、カンザキイオリといったボカロPやその出身者が今夏、立て続けに小説をリリースし、ヒットしている。2010年代前半、「カゲロウプロジェクト」が中高生の間で人気を博し、ボカロ小説はブームとなったが、この新しい波は以前と何が違うのか――。子どもの本をめぐる事情に詳しいライターの飯田一史が分析する。

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左よりヨルシカ『盗作』の初回限定盤(ユニバーサル)、YOASOBI『夜に駆ける』(双葉社)、カンザキイオリ『あの夏が飽和する。』(河出書房新社)。いずれもこの夏にリリースされ、中高生などの間で話題を呼んだり、ヒットしたりした。

 ボカロP出身のn-bunaが結成したバンド、ヨルシカ。2020年7月に発売したメジャー3rdアルバム『盗作』の初回限定盤にはn-buna執筆の中編小説が収録され、話題を呼んだ。やはりボカロPであるAyaseがコンポーザーを務めるYOASOBIは、ソニーミュージックが運営する小説投稿サイト「monogatary.com」発の作品を音楽化するプロジェクトだが、その原作小説を集めた短編小説集『夜に駆ける』(双葉社)は9月発売の初版3万5000部が即重版し、新人作家の短編集としては異例の売れ行きを見せた。楽曲の原作になった小説『たぶん』(同書所収)は20年晩秋に映画公開予定だ。さらに、ボカロPのカンザキイオリが9月に発売した小説『あの夏が飽和する。』(河出書房新社)も10月5日重版出来分で6万部とヒットしている。

 このように、ボカロ小説は第2次ブームの様相を見せている。

 ボーカロイド楽曲を原作とした小説――「ボカロ小説」は、10年発売の悪ノP(mothy)『悪ノ娘』(PHP研究所)のヒット以降、2010年代前半にブームとなった。もっとも著名なものに、マルチメディアプロジェクト「カゲロウプロジェクト(以下、カゲプロ)」を展開するじん(自然の敵P)の『カゲロウデイズ』(KCG文庫)があり、シリーズ累計400万部以上のヒットとなった。

 しかし、14年夏に放映されたカゲプロのテレビアニメは商業的に失敗に終わった。これと前後するhuke『ブラック★ロックシューター』(KADOKAWA)、halyosy『桜ノ雨』(PHP研究所)、Last Note.『ミカグラ学園組曲』(MF文庫J)、吉田恵里香『脳漿炸裂ガール』(角川ビーンズ文庫)の映像化もヒットに至らなかったことで、「ボカロ関連を映像化しても売れない」という空気が醸成。並行して、ボカロ文化を牽引していたニコニコ動画がスマホ対応に遅れて影響力を失うと、ボカロ小説は徐々に売れなくなり、第1次ブームは15年頃を境に終息していった。

キャラクターから作家のビジネスへ

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