サイゾーpremium  > 連載  > 小原真史の「写真時評 ~モンタージュ 過去×現在~」  > 小原真史の「写真時評」/黒いヴィーナス
連載
写真時評~モンタージュ 現在×過去~

黒いヴィーナス

+お気に入りに追加
2011_P108-111_img01_520.jpg
1927年の米「ヴァニティ・フェア」誌に掲載された、寄り目のジョセフィン・ベイカーの写真。(写真:George Hoyningen-Huene/Condé Nast via Getty Images)

 特定の色をした人間にしか自由をくれない自由の女神像よりも、何も約束しないエッフェル塔のほうが好き。

「狂瀾の時代」と呼ばれた1920年代のパリで、ミュージックホールの女王となったダンサー、ジョセフィン・ベイカーの言葉だ。1906年、米セントルイスでユダヤ系スペイン人の父とアフリカ系アメリカ人の母との間に生まれたジョセフィンは、25年、アメリカでの差別や貧困から逃れるかのようにレヴュー団「ルヴュ・ネーグル(ニグロ・レヴュー)」の一員として19歳でパリに渡った。

 当時のパリでは、戦争が終わった後も帰国しない元兵士たちがあふれていただけでなく、世界各地から芸術家や文学者が流れ込み、新しく自由な価値観が模索されていた。アメリカのジャズやチャールストンというダンスが人気を博し、「メラノフィリア(黒い肌愛好)」現象が起きていた国際文化都市パリには、「黒いヴィーナス」と称されるスターが誕生する土壌が用意されていたように見える。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年5月号

新・ニッポンの論点

新・ニッポンの論点

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【マルサの女】名取くるみ
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【Lee Seou】八面玲瓏として輝く物言う花
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【雪村花鈴&山田かな】CYZOデジタル写真集シリーズ
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ