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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第152回

『ザ・ボーイズ』極右ヒーローを倒せ! アメリカの今がわかる新“ヒーロー”ドラマ

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『ザ・ボーイズ』

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アメリカの平和は「セブン」と呼ばれるヒーロー集団に守られていた。だが、彼らの正体は欲にまみれた悪党集団だった。さらに彼らは、政府のプロパガンダまで請け負う巨大広告代理店に所属している。そんなセブンに「ザ・ボーイズ」が立ち向かうが……。製作総指揮:セス・ローゲンほか/出演:カール・アーバン、エリザベス・シューほか。アマゾン・プライムで配信中。

 アメリカは7人のスーパーヒーロー・チーム「セブン」に守られていた。国内外の敵を倒し、国民から熱狂的に崇拝される彼らの実態は、殺人、レイプ、なんでもござれ、欲にまみれた悪党集団だった。恋人をセブンに殺された青年ヒューイは、セブンに恨みを持つ者たちのレジスタンス・グループ「ザ・ボーイズ」の一員として戦い始める……。

 アマゾン・プライムで配信中のドラマ『ザ・ボーイズ』は、日本では、『アベンジャーズ』などのヒーロー・コミックの単なるパロディだと思われているようだが、アメリカ人からすると、アメリカの現在をリアルタイムで映す鏡にしか見えないのだ。

 たとえば、DCコミックスのアクアマンのように海の生物を操るディープというヒーローは、セブンの新メンバーにオーラル・セックスを強要し、それが告発されてセブンをクビになる。それはアメリカで2 0 1 7年に起こったセクハラ告発運動#MeTooを思わせる。また、ディープは共同教会という宗教団体によってセクハラのリハビリを受けるが、これはサイエントロジーのこと。サイエントロジーはトム・クルーズの読字障害を治したことで有名だ。ディープは教会の管理下で、見合い結婚するが、それもトム・クルーズがしたこと。

 セブンのリーダーはホームランダー。星条旗のマントをひるがえし、中東に飛んで目からのレーザー光線でテロリストを焼き殺す。彼はスーパーマンの右翼バージョンというだけではない。ホームランダーという名は9・11テロの後に設立された連邦政府の対テロ機関、国土安全保障省(デパートメント・オブ・ホームランド・セキュリティ)から取られている。

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