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●放送コンテンツのインターネット同時配信等に係る著作権処理の円滑化の推進について(出典)2020年2月28日文化庁著作権課より
――9月に発足した菅政権で、ツイッターでおなじみの河野太郎議員が行政改革担当大臣に就任。直後から「ハンコ廃止」で話題をさらったかと思うと、今度は文化庁に対して「やる気がないなら、やめさせるぞ」と激おこぷんぷん丸に。文化庁といえば、2019年にネットの海賊版対策として不正コンテンツのダウンロード違法化を強行しようとしたことで、当の権利者からも反対される騒ぎを起こした。そんな文化庁が、今度は大臣から怒られるとは、いったい何をやらかしたのか。
クロサカ 今月は弁護士の落合孝文さんをお招きして、今政府が進めている規制改革の中でも、特に放送分野での動きについてお聞きしたいと思います。
落合 内閣府に設置された規制改革推進会議【1】の中に設けられた投資等ワーキング・グループ(以下、投資等WG)【2】で、2019年12月から専門委員に選任されました。デジタル化、新技術の利用やFinTech分野や交通、不動産関係について貢献を期待されて選出されたのだと思います。
クロサカ 投資等WGは、投資という冠こそついていますが、実際には金融からITサービス、電波・通信制度、スタートアップなどかなり幅広い分野をカバーしていますよね。ところが、過去1年間は、結果的に放送に関する議論がかなり大きく盛り上がりました。
落合 最初は放送がここまで、世間的に盛り上がるとは思っていなかったですね。ただ、やらなければならない重点分野のひとつなので、地道に進めていかないと、とは思っていたんですが。
先日は9月に菅内閣が発足して河野太郎議員が規制改革特命担当大臣に就任されると、最初に投資等WGに出席されたこともあって、思った以上に注目されていると感じています。
クロサカ 経緯を簡単に整理すると、規制改革推進会議は2016年9月から始まり、2019年7月でいったん終了しています。そして、恒久的に設置する会議体となったので仕切り直して、2019年12月から改めて規制改革推進会議がスタートしていて、落合さんはその新しい推進会議の投資等WGの専門委員をされている。落合さんは、もともとFinTech分野への貢献を想定されていたとおっしゃっていましたが、この1年は放送分野へ多くの時間を割くことになっています。この展開は予想されていましたか?
落合 こういう流れになるとは最初は思っていませんでした。放送分野に関する議題としては、総務省からアナログテレビで使っていた電波帯域のV-High帯の活用方針や、番組を放送と同時にインターネットで配信するための制度整備などが、フォローアップとして最初に議論されました。あと、2020年2月の第6回の投資等WGで議題となった、IP同時送信【3】にあたっての著作権の取り扱いも、規制改革実施計画のフォローアップで予定されていたものです。
クロサカ ここがややこしいんですが、放送行政は総務省の管轄だけど著作権は文化庁の管轄です。なので放送分野の規制改革といっても、放送そのものの制度について総務省が、著作権に関する制度は文化庁がそれぞれ規制改革を進めなければいけないんですね。
落合 その通りです。
クロサカ 河野大臣といえば「ハンコ廃止」で注目を集めていますが、放送改革についても「やる気がないなら担当部署を変える」と文化庁に迫ったことがニュースになりました。なぜ、河野大臣は怒ったんでしょうか?