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萱野稔人と巡る超・人間学【第15回】

萱野稔人と巡る【超・人間学】――人類と薬の根源的な関係(前編)

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――人間はどこから来たのか 人間は何者か 人間はどこに行くのか――。最先端の知見を有する学識者と“人間”について語り合う。

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(写真/永峰拓也)

今月のゲスト
佐藤健太郎[サイエンスライター]

古代より現代まで、常に人類は病苦を癒やしてくれる薬を求めてきた。時に歴史を駆動する力となり、時に政治や社会を大きく揺り動かすターニングポイントにもなった薬と人類の深い関係性を論じ合う。

萱野 現在、新型コロナウイルス感染症の治療薬、ワクチンの開発が世界的に待ち望まれています。そうした状況を受けて、今回は“人類と薬”の関係について考えていきたいと思います。ゲストは『医薬品クライシス』(新潮新書)、『創薬科学入門』(オーム社)、『世界史を変えた薬』(講談社現代新書)など、医薬についての著作があるサイエンスライター、佐藤健太郎さんです。佐藤さんは名著『炭素文明論』(新潮選書)をはじめ、ポピュラーサイエンスの分野でさまざまな内容の著作を出されています。佐藤さんは以前、製薬会社に勤めていたそうですね。

佐藤 大学院修了後、医薬品メーカーに入社して13年ほど医薬研究に携わってきました。当時は研究所でフラスコを振って新しい化合物を作り、試験をして効果を確かめて……そんな日々の繰り返しでした。残念ながら研究者として新しい薬を生み出すような大きな成果は挙げられませんでしたが。

萱野 まさに創薬の現場にいたということですね。医薬の開発という仕事は私を含めた多くの人にとってあまり馴染みのない世界です。実際の創薬の現場とはどのようなものなのでしょうか。

佐藤 薬の開発には本当に数多くの困難が伴います。医薬品の候補として2万種以上の化合物を合成したとして、そのうち世に出るのは1種あるかないかといわれるほど新薬開発の成功確率は低いのです。さらに、たとえば今日、ある研究者が薬として効果のある化合物の合成に成功したとしましょう。ところが、その薬が臨床試験をクリアして承認を受け、実際に患者の治療に使われるようになるまで、10~15年ぐらいは平気でかかってしまいます。現在、1年間に新薬として承認、発売される医薬品は40~50点程度しかありません。これは海外のメガファーマと呼ばれる巨大製薬企業を含めた全世界数百社の製薬メーカーが、継続的な研究を全力で行ってきた結果の数字です。こうした創薬の実情を見ると、ひとつの薬を創り出すことは、オリンピックの金メダルやノーベル賞をとることよりも難しいとすらいえるかもしれません。

ワクチン開発に絡む政治的思惑

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