(構成/里中高志)
昆虫好きなら誰もが知る昆虫専門誌、それが「月刊むし」(むし社)だ。
1971年創刊の同誌は、論文中心の硬派な作りながら、日本中の昆虫マニアから絶大な支持を得てきた。社内には昆虫ショップも併設され、虫かごや昆虫図鑑、標本が所狭しと並ぶ。昆虫マニアにとってはまさに宝の山であり、日本中どころか、コロナ禍前は世界各国からも昆虫ファンが訪れていたという。
そんなむし社の社長で、「月刊むし」の編集長が、藤田宏氏(67)。虫マニアでは知らない人のいない、虫界の巨人と言われている。
「月刊むし」の藤田宏編集長。
昆虫に囲まれたむし社の編集部で藤田宏編集長に、奥深い虫の世界についてインタビューを行った。
「『月刊むし』は、1971年に、4人の大学生によって創刊されました。当時はちょうど東大紛争の時代で、彼らは団塊の世代。ひとりは東大生、2人が都立大で、ひとりが立教でしたが、みんな虫が大好きで、この雑誌を創刊したんです。私はその頃高校生で、編集長と虫仲間になったことが縁で編集部に入りました。大学は文学部で虫と全然関係なかったんですけど、虫を採りに行くのに忙しくて中退しまして(笑)、本当は家業の着物屋を継ぐはずだったのですが、着物よりも虫が好きだったので、虫を仕事にすることになりました」
藤田編集長の専門はカミキリムシとクワガタムシ。今は雑誌の編集は主に編集部員に任せ、月の半分は新しい図鑑を作る作業をしている。藤田編集長が発見した新種や新亜種の虫はなんと百数十にものぼるというまさに世界的な虫の大家である。