――コロナ自粛中にSNSで大きな話題となったのが新宿・歌舞伎町の「スカウト狩り」事件だった。スカウトというそれほど聞きなじみがなく実態がわからない職業が、裏社会とのきな臭い接点で結びついたことで、暇を持て余した一般人の興味をそそるものになったのだろう。事件の顛末と、そこから見えてきたスカウトという職業の実像を見てみよう。
新型コロナもなんのそので盛り上がる日本一の歓楽街・新宿歌舞伎町。(写真/Tomohiro Ohsumi・特派員「Getty Images」より)
これほどまでに「夜の街」という言葉がテレビで繰り返されたことはあっただろうか。ホストなどの接待型飲食店で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、注目を浴びる新宿・歌舞伎町。政府による緊急事態宣言が解除された6月初めの週末、その歌舞伎町は暴力と混沌に支配されていた。
ある日突然、複数のいかつい男性がスカウト業を生業とする男性を罵倒しながら暴行し、その様子を撮影した動画がツイッターに投稿されるや、「スカウト狩り」として瞬く間に拡散していった。歌舞伎町にいたホストの男性は「店長から“今、不良(ヤクザの通称)がスカウトを無差別に叩いてる(ここでは暴行を加えているの意)ので、朝まで店から出るな”と言われた」と語る。
それら動画に撮影された事件はほんの一部で当時、歌舞伎町中で同様の「スカウト狩り」が行われていたのだ。身なりだけではスカウトかホストか一般人かが識別できないため、ブランド服で身を固めて街に立っている“それっぽい”男性が総ざらいで袋叩きにされており、ホストの彼も身を潜める必要があったそうだ。ではなぜ突然、この「スカウト狩り」は起こったのだろうか?
「歌舞伎町界隈を縄張りにする『A』というスカウト会社の経営者が、ケツモチの暴力団員を叩いたことが発端だと聞きました。このAは未成年を風俗店に紹介して店を潰したことがきっかけでケツモチの暴力団がついたという経緯があって、もともと関係が良くなかったみたいです」(元歌舞伎町周辺のスカウト)
Aには500人とも1000人ともいわれる多数のスカウトが所属しており、新宿を中心に活動していたが現在、その姿は路上から消えている。