――新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大してしまったイタリアは、長期間にもわたる都市封鎖で相当な経済的被害を受けている。そんな中、政府に代わって、組織型犯罪集団「マフィア」による違法な融資や貧困家庭への食料などの施しが行われているが、果たしてその目的とは?
5月23日、1992年にマフィアに車ごと爆殺されたジョヴァンニ・ファルコーネ判事の28回目の追悼イベントが、ロックダウン解除後のシチリア島のパレルモで行われた。(Photo by Tullio Puglia/Getty Images)
今なお、世界中で爆発的に感染者および死亡者数が増えている新型コロナウイルスだが、ある程度感染拡大が落ち着いた地域もある。
例えば、2月下旬以降、EUで最初の爆発的増加をもたらしたイタリアだ。同国は1日で最大約1000人が死亡し、7月現在、3万4000人以上の死者が出てしまった。一時は死者数が世界最多となり、ロックダウンが実施されるなど、大打撃を受けたが、徐々に感染者数は減少していき、6月3日からは大幅に移動制限が緩和された。
もっとも、その経済的な損失は計り知れず、イギリスの経済誌「エコノミスト」の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」は3月末、「新型ウイルス危機により、イタリアの2020年の国内総生産(GDP)は7%縮小する」との予測を発表。倒産の危機に直面しているイタリア国内の中小企業は約65%に上るというイタリアの専門家もおり、さらに同国ではこの2カ月で貧困層が新たに100万人増えたとの分析もあるようだ。
そんなコロナによる経済的な混乱が続くイタリアでは、同国最大の犯罪組織マフィアの暗躍が懸念されている。
4月、イタリア4大マフィアのひとつである犯罪組織「カモッラ」の実態を描いたノンフィクション作品『死都ゴモラ』(河出書房新社)の著者、ロベルト・サヴィアーノは「イタリアの犯罪組織が影響力を拡大すべく、貧困層に食料を配り、さらに貧困層へ無利子で融資するよう貸金業者に命じている」と、イタリア・マフィアの脅威に警鐘を鳴らしたと、AFP通信は報じた。以降、BBCやNHKなど国際ニュースを発信する通信社やメディアは、マフィアによる食料の施しや違法貸付にすがらざるを得ないイタリア市民の苦境を報じるようになっている。
犯罪組織にもかかわらず、人々が助けを求めるマフィアとは、いったいイタリアではどういった存在なのだろうか? アフターコロナで暗躍するマフィアと同国の現状を見ていきたい。