――この20年以上、J-POP界のラブソングの女王として君臨してきたaiko。かつてTOKIO・国分太一や星野源と交際・破局したことでも知られる彼女は、その歌詞が時に“呪い”のようだとあげつらわれたりもするが、これほど人気を保ち続けるのは驚異だ。そんなaikoのポテンシャルを、徹底的に考察する!
(絵/藤本康生)
1998年にデビューし、これまでにシングル39枚、オリジナルアルバム13枚を発売。『NHK紅白歌合戦』には直近の2019年を含めて14回も出演し、44歳になった今もなおラブソングの担い手として人気をずっと保ち続けているシンガーソングライターのaiko。歌詞について本人は、「きっかけはね、絶対あったことじゃないと書けないんですよ。でも、その分良い事も悪い事も想像するのが好きなんです」(エンタメ系ニュースサイト「TOKYO FM+」16年6月6日付」)と、実体験と妄想を合わせて書いていることを明かしているが、事実、プライベートでもTOKIOの国分太一や今ほど名前が知られていなかった頃の星野源と浮き名を流し、それぞれ「結婚間近」と報じられたこともある(が、いずれも破局)。そんなaikoは、なぜこんなにも支持され続けているのだろうか――。
上より「花火」(99年)と「青空」(20年)のMV。20年で何が変化したか――。
ラブソングでここまで支持されているというのは、やはり根底には共感があるといえる。『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)などの著書がある音楽・文芸の批評家で、現役の高校教師でもある矢野利裕氏は、次のように語る。
「70~80年代のストーリーテリング的な歌謡曲の時代が終わり、J-POPが確立した90年代から、カラオケの影響も加わり、歌手と歌詞の世界とリスナーが重なるような、共感や感情移入をさせるような歌詞が多くなっていきました」
aikoの歌詞の一人称は“あたし”。その“あたし”の恋物語を、多くの女性が「あるある」「ハマる」と支持してきた。
「『あたし』の世界の中にいる“あなた”の不在が一貫したテーマとなっています。この不在には3パターンある。恋人関係だけど何かしら理由があって会えないパターンと、別れたのでもう会えないパターン。そして、恋人関係で一緒に空間を共にしているけれども通じ合えないパターン。シングル『戻れない明日』(10年)には、『あたしはあなたじゃないから全てを同じように感じられないからこそ』という歌詞があります。最終的には通じ合えないという断絶から出発している。これは、aiko的世界観の根底にある重要な一節だと思います。“あなた”のことばかり気にする恋愛依存的な感じは、同時代の女性アーティストでは当時のギャルに支持された浜崎あゆみや、その後継世代である加藤ミリヤや西野カナにも通じる部分がある」(矢野氏)
J-POPの歌詞に詳しい詩人で社会学者の水無田気流氏は、日本のポップソングの歌詞は桜の花に散りゆく恋を歌い込んだり、恋する2人は翼を広げたりするように、個人の主体性ではなく、花鳥風月に恋愛を語らせる傾向があると指摘。その上で、aikoの曲に見られる恋愛依存的な歌詞について、こう分析する。