――歯に衣着せぬ発言で芸能界の裏事情を語り倒す動画。配信者は、山田邦子。えっ、あの邦ちゃんが!?――と、徐々に再生回数も増え始め、一般層にも轟き始めた彼女が開設したYouTubeチャンネル。YouTuberとして自身のチャンネルについての取材は初とのことで、いったいレジェンドの口からは、どんな話が飛び出すのか……?
(写真/有高唯之)
2019年6月に、芸能界デビュー時から在籍していた太田プロを退社した、あの山田邦子がYouTuberに転身!? 80~90年代初めの全盛期にはレギュラー番組14本を抱え、「天下を取った女性ピン芸人」と呼ばれる彼女が、2月にYouTubeチャンネル「山田邦子 クニチャンネル」を開設した。
撮影場所は事務所の一角や自宅、編集やテロップは最小限にとどめたひとり語りのシンプルなスタイルで、これまでに「太田プロを辞めた理由を話します」「槇原敬之の覚醒剤逮捕について」「パ○ズリという言葉を発明したのは山田邦子……?」といった際どいテーマにズバズバ斬り込み、開設から1カ月ほどでチャンネル登録数は1万人を突破した。芸歴40年の圧倒的な話術とモノマネを、週3~4回という怒涛の更新頻度で惜しげもなく披露している山田。なぜYouTubeに進出したのか。その心境を聞いた。
――YouTubeを始めたきっかけを教えてください。
山田邦子(以下、山田) 前の事務所にいたときから始めたかったんですよ。でも、賛成してもらえなかったの。今回ご縁があって所属した事務所は社長が若いということもあり、面白がってくれたので始めることができたんです。内容は、やはり生業としているモノマネにしようか、趣味が多いので釣りやお人形、お料理やソーイングに関することがいいかなと思ってたんですね。でも、最近気になっていたのが、芸能界のご意見番が年を取ってしまって現場に行かずにネットでネタを拾ってしゃべっている人ばかりということで……そこが薄いなと。それなら私がご意見番をやろうと思ったんです。
――反応はいかがですか?
山田 いろんな方から「見てるよ」と言われて、率直にうれしい。行きつけの美容師さんやお洋服屋さんからは、「働いているとテレビはあまり見られないけど、YouTubeだと帰って好きな時間に見られる」と言われたり、ハワイの友人からも「いつも見てるよー」と連絡が来たり。「ラジオを聴いているみたい」「飲みながら見ると一緒に飲んでいる気がする」なんてありがたい言葉もいただいたり、「邦子さんを見たくて初めてYouTubeを見ました」という年配の方も。今までのYouTubeのターゲットとは違う層が入っているのは、年の功かもね(笑)。これまで露出が少なかったこともあって事務所を変えたので、こうしてアピールできてうれしい限りです。ひとりしゃべりが商売だから、性に合ってるのかもね。
――動画のネタは山田さん自身が考えているのですか?
山田 自分から発信することもあれば、事務所のスタッフや社長がネタを提供してくれることもある。最初は時事ネタ、旬のネタをすぐに配信しようと思っていたんですけど、意外とそうでないものに(視聴者は)食いついてくれるんですよね。例えば『ひょうきん族』(フジテレビ系で81年~89年まで放送されていたバラエティ番組『オレたちひょうきん族』)の話をもっと聞きたいという人がすごく多かったり。話しているうちに、だんだん自分の記憶も蘇ってくるんですよね。
――あの当時はネットがなく、情報源はテレビ、雑誌、新聞。細かい情報を知る術がありませんでした。だからこそファンは知りたいのでしょうね。
山田 ウィキペディアを見ると、当時のファンの方が記憶を頼りに一生懸命調べてまとめてくださったんだと思うんですが、ちょっと偏っていたり間違いも多い。だから、当事者がしゃべっちゃえ、みたいな。なので、『やまだかつてないテレビ』(フジテレビ系で89年~92年まで放送された『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』)や(交流の深い)BOØWYの話のリクエストも多いですね。
――ひとりきりでワンカメラ、話術だけで見せるというスタイルがまたいいですよね。山田さんの話術の巧みさが際立っています。長さもちょうどいい。
山田 10分ちょっとの動画のほうが広告が入りやすいというので、あの長さなんですよね。私、ライブでは90分だったら90分、ずっとスタンダップコメディをやるんです。15分くらいの話を何本も持っているので、60分だったら4本、90分だったら6本話す。時間は体内時計で管理。生放送も長い間やっていたので、3秒で締めてくださいと言われたら、きっちり3秒で締められる。1月に『笑点』(日本テレビ系)に出演して「5~6分で」と言われたから、その通りにしゃべったのに、放送を見たら途中でカットされてたの。や~ね~(笑)。
――YouTubeを始めて、収益はどれくらい出ているのでしょうか?
山田 それがまだなの。もうちょっと続けたら収益も見込めるんでしょうけどね。
――基本的には広告を取ろうとか、視聴者におもねろうとして萎縮せず、好きなことを発信していく形ですか?
山田 そもそも私自身、そんなにエグくないから、自由にやってもそこまでじゃないと思う。あ、でも下ネタはダメだった。下ネタを言い続けて40年、いけるんじゃないかと思ってたんですけど、パイズリはダメでしたねー(笑)。子どもが言う「ウンコ」「チンチン」レベルかと思ってたんだけど、YouTube側から「審議中」の警告が届いて。昔はテレビ番組でもオッパイはいっぱい出てきたし、アイドルの水泳大会もポロリがあって盛り上がっていた。そこで親から「子どもはもう寝なさい!」とか「見ちゃダメ!」と言われるのが面白かったのに。だんだん厳しくなってテレビ以外でコソコソ見るようになって、そのほうがどんどんエグくなっちゃうと思うんですけどね。なので、YouTubeを始めて、そういったシステムも勉強になりました。