――現在、テレビ業界が力を入れているのが放送外収入。その事業のひとつが各地で行われる美術展への出資だ。確かに日本は世界でも有数の“美術館大好き国”といわれ、多くのファンがさまざまな美術展に足を運んでいるという。だがその裏には、数多の利権に絡め取られた世界があるようだ。
六本木ヒルズや東京ミッドタウンなど、独自の美術館がひしめく六本木。国立新美術館は押され気味かもしれない。
テレビ局の主な収入源は番組スポンサーによる広告費収入だが、視聴率が低下し視聴層が高齢化していることで、その広告価値が衰退の一途をたどっている。電通の調べによれば、2018年の地上波テレビ広告費は1兆7848億円。一方でインターネット広告費は、1兆7589億円にまで迫っている。前年比の116・5%で、5年連続で2桁成長を遂げているというのだから、19年では立場が逆転していることは予想するのにたやすい。
あるキー局社員は、そんな煽りからテレビ局の収益に対する考え方が変わってきていると話す。
「テレビ局はビジネスの過渡期でいよいよ、映画への出資やイベント開催、グッズなどの放送外収入をどう引き上げていくかに、具体的に注力を始めているところ。かつては放送収入と比べて9:1くらいの割合だったんですが、ここ4年くらいで8:2くらいになってます」
そんな放送外収入の中で10~15年ほど前から、各局が積極的に取り組んでいるのがイベント収入、特に美術展ビジネスだろう。「モネ展」「ルノワール展」「ダリ展」など有名画家の美術展は、「あれ? 最近もやったばかりじゃない?」と思うほど毎年のように開催され、テレビで盛んに宣伝が組まれている。そこで19年に開催された美術展の来場者数ランキング(18年から会期がまたいでいるものも含む)を見ても、1位はフジテレビが主催に入っているフェルメール展で来場者数は68万人超え。以降、ランキング内の美術展には森美術館が単独主催するイベント以外は、たいていテレビ局がかかわっている。放送収入が見込めなくなってきている中で、イベント動員を見込める美術展ビジネスはテレビ局の事業として確かな利益につながっているように思える。