――『白竜』や『ミナミの帝王』など男のドラマを世に放ち続けてきた「漫画ゴラク」に今、変革が起きつつあるという。長らく同誌を愛読してきた映画ライター・加藤よしきが、ゴラクの魅力と今後の展望を偏愛交じりに熱く書きつづる!
「ゴラク」といえば『白竜』! と思いきや、そのカラーは少しずつ変化してきているようで……。
ヤクザ・エロ・メシ――「漫画ゴラク」といえば、こうしたイメージではないだろうか。本稿で語る「ゴラク」とは、日本文芸社が手がける週刊マンガ雑誌であり、「ジャンプ」「サンデー」「マガジン」「チャンピオン」といった雑誌に並ぶ、コンビニの週刊レギュラーメンバーでもある。ただし先に挙げた4誌はフレッシュな少年少女が表紙なのに対して、ゴラクは主にヤクザ・闇金・寿司職人が表紙を飾りがち。端的にいえばオッサン向けの雑誌。こうした認識は正しい。看板マンガはアウトローマンガの古典『白竜』『ミナミの帝王』で、どちらも若者向けとは言い難い。前述のようなイメージに囚われても仕方がないだろう。しかし、そんなゴラクに変化が起きていることをご存じだろうか? 実は最近になって、ゴラクのターゲット層が中年男性以外に広がり、多様化が進んでいるのだ。国際情勢が急激に変化を遂げている現在、どこか変化を恐れているように見える日本社会に警鐘を鳴らすためにも、今回はゴラクで起きているポジティブな変化を紹介したい。
ゴラクの変化を端的に表しているのは、本誌の裏表紙だろう。雑誌の「表」は連載中の作品が飾るが(『白竜』が多い)、裏表紙は『この世界の片隅に』の作者、こうの史代による連載『百一 hyakuichi』になっている。百人一首から着想を得たイラストを描くもので、2018年から連載中だ。ヤクザと百人一首が表裏一体になっている雑誌も珍しい。ゴラクの懐の深さがうかがい知れる。また、かつて少年ジャンプを彩った作品の続編や、ショートギャグ系・隔週連載・エッセイ系の作品も掲載されており、ヤクザ・エロ・メシではくくれないのが“正しい”現状だ。