――通勤中や就寝前の空き時間に、スマホで読む人も多い電子コミック。そこでの売り上げ上位作品には、『ONE PIECE』のようなメジャー作品や、マンガ通が好む『このマンガがすごい!』の選出作品とはまったく違うものも並んでいる。普通の人は知らない電子の世界で売れている作品を関係者が語り合う。
『ReLIFE』(夜宵草/泰文堂)4巻より。
[座談会参加者]
A…コミックサイト編集者
B…大手出版社の電子コミック編集者
C…中堅出版社の電子コミック編集者
D…電子コミック書店 社員
A 「電子で売れたコミック」というテーマだと、基本はエロ中心になりますよね?
B マンガで最初にデジタル化が進んだのは男性向けのエロ作品やTL(ティーンズラブ)、BL(ボーイズラブ)でしたからね。街の書店ではその手の本の売り場面積って数%ですけど、デジタルはもともと100%がそっちの世界だった。
D 要はエロ本を買えない人が、ガラケーで夜にコッソリ見るものだったんですよね。
A 今も業界トップクラスの電子書店「めちゃコミック(めちゃコミ)」が台頭してきた2007年頃は、ガラケー向けのエロマンガは作れば売れる時代でした。10年代の半ばには実力のある作家さんもボーンデジタル(最初からデジタルデータで作成された作品。以下、ボンデジ)の世界に入り始めて、今や紙と電子の市場が逆転しているという話もある。
C 「LINEマンガ」で東村アキコが描き下ろしをする時代だからね。
B 最近も井上雄彦の『リアル』(集英社)が電子化されて話題になったけど、10年前はビッグネームの作品の電子化なんて絶対OK出なかったよ。
A 電子を拒絶していた出版社側も今や考え方が逆で、「紙で出すほうがコストが高い」という認識が広まってきましたしね。
B アニメ化や映画化をしても、コミックを重版しない出版社も出てきました。今はデジタルで売れちゃうから。『キングダム』(集英社)も『アメトーーク!』(テレ朝)での特集以降、電子の動きが明らかに良くなったし。
C でも大御所のマンガ家によるボンデジ作品って、ホント東村アキコくらいですよね。今の電子市場では、大御所の作家を起用するよりも、無名作家にマーケティングデータを渡して描いてもらうほうが売れちゃうからな。