――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。
最近、「メディアからの取材オファーが増えてきました」と語る木下伸之さん。オリゼーブルーイングの1Fは立ち飲み可能なので、ぜひお立ち寄りを。
ビールの原料は麦である。より厳密にいえば、大麦を発芽させた麦芽を酵母で発酵させるのが一般的なビールの製法だ。
ところが、麦芽を一切使うことなく、麹でビールを造るブルワーが和歌山県にいるという。一体なぜ、そんな酔狂な試みを思いついたのか? そもそも、麹で醸すビールは美味いのか? 頭の中が疑問符でいっぱいになるのを感じながら、さっそく「オリゼーブルーイング」がある和歌山県和歌山市へと飛んだ。
JR和歌山市駅から徒歩3分の好立地に立つブルワリーで出迎えてくれたのは、オーナーブルワーの木下伸之さん。ブルワリーの立ち上げは今年の6月だが、木下さんはここで5年前から醸造工房を営み、甘酒由来のスポーツ飲料やコンブチャ(紅茶キノコ)の製造・販売を手がけてきた。まず、その社会人キャリアがなかなか興味深い。
「大学卒業後、2年間醤油メーカーに勤めた後、一度は東京で音楽活動を行っていました。その後、再び会社員に戻り、熊本の醸造メーカーや福岡の清酒メーカーなどの職を経験し、最終的に地元の和歌山でこの工房を起業しています」
つまり、そのキャリアは醸造や発酵と共にあったと言っていい。そのため当初はビールではなく、日本酒造りに関心を持っていたという。