――2017年、千葉県でベトナム国籍の小学3年生の女児が殺害され、被害者が通う学校の保護者会会長だった男が逮捕された。このほかにも小児性犯罪事件はしばしばニュースとなるが、小児性愛=ペドフィリアは“病”だという。では、その治療とはいかなるものか? 現場の実態を探りたい。
『「小児性愛」という病 ―それは愛ではない』(ブックマン社)
ヘテロセクシュアルの成人男性が性的な欲求を向ける対象は、一般的には同年代の女性であることが多いだろう。しかし、中には自分よりもはるかに年下の、もっといえば子どもにそれを向ける層もいる。彼らは、ここ日本では“ロリコン”というある種ポップな言葉でくくられがちであるが、他方でそのような性指向が、2017年の千葉小3女児殺害事件(次記事参照)のような痛ましい事件をたびたび引き起こしてもいる。
また、日本語のロリコンは造語であり、欧米では同種の嗜好を持つ人は“ペドフィリア”と呼称されるが、彼らはどのような性質を持った人たちなのだろうか?大森榎本クリニックの精神保健福祉部長で、『「小児性愛」という病――それは愛ではない』(ブックマン社)の著者である精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏は、次のように説明する。
「アメリカの精神医学会が発行する国際的な診断ガイドラインであるDSM-Ⅴ(精神疾患の分類と診断の手引き)では、“小児性愛障害”と呼んでいます。その診断基準は、少なくとも6カ月にわたり、通常13歳以下の児童との性行為に対する強烈な性的な空想、衝動、または行動が反復するというもの。典型的なのが子どもへの性加害ですが、行動化=犯罪化しなくとも、子どもを自慰行為の対象とするといった場合も含まれます」
つまり、ペドフィリアは性指向ではなく性嗜好であり、精神疾患のひとつでもあって、専門治療を要するものなのだ。