――すべての人々に密接に関係しながらも、他人には話しづらい事象である「セックス」。最近はマッチングアプリも浸透したことで、「一夜限りの相手」を見つけることも簡単なのに、なぜか世間ではセックスレスが加速しているという……。
「日本人のセックス離れ」はこれまでに何度も語られてきたが、実は今「世界規模でセックス不況」に直面しているのはご存じだろうか? 2018年に米国の総合雑誌「The Atlantic」は、この現象についていち早く言及し、各国の詳細なデータを提示しながら、世界的なセックス離れを考察した。
さまざまな原因がある中でも、同誌がまず指摘しているのがテクノロジーの進化である。インターネットを通じて簡単に手に入れることのできるポルノ動画の類が、現実のリアルなセックスへの欲求を低下させているのだという。
確かにポルノの多様化が顕著な昨今、今月号特集の記事「アダルトサイトの奇妙なタグ」や「PornhubとAI」でも取り上げるが、PornhubやXVideosといったポルノ動画サイトのUIは人々が思っている以上に最適化され、コンテンツそのものも進化を遂げている。
また、同誌のレポートには日本の童貞・処女率も取り上げられている。「童貞と芸人」(62ページ)でもこの傾向について触れているが、政府の出生動向基本調査によると、05年では18~34歳の独身者のうち33%程度だった「性経験なし」の割合が、10年後の15年には42%まで上がったという。つまり、若者の半分近くがセックスをしたことがないのだ。
ところで、セックスを辞書で引くと「(1)生物上の、男女・雌雄の別。性→ジェンダー」「(2)性の交わりを求める欲望。性。また、性交」(デジタル大辞泉)と出てくる。「性の交わりを求める欲望」という意味合いでは、近年は女性のセックスに対する向き合い方に、変化が起きていることも特徴といえるだろう。