――2000年代に日本でハスリング(薬物密売を指すスラング)ラップというアートフォームを開拓した伝説的ヒップホップ・グループ、SCARSの首領であるA-THUG。Netflixには麻薬を題材にしたドラマやドキュメンタリーが多いが、その中でこの男がフィールしたコンテンツとは――。
(写真/渡部幸和)
A-THUGは2000年代半ば、SCARSというグループのリーダーとして日本のヒップホップ・シーンに登場した。彼らのラップは事件だった。なぜなら、ドラッグ・ディーラーの視点からその心情やトラブルなどを歌っていたからだ。リスナーはもちろん、同業者であるラッパーたちですら「そんなことまで歌っちゃって大丈夫!?」と衝撃を受けたのである。
やがてA-THUGを含むメンバーの逮捕が相次ぎ、活動は停滞していたが、18年末にアパレル・ブランド「BlackEyePatch」のコレクションにフィーチャー。その後、グループとして再始動するなど、改めて注目されている。また、A-THUG自身は近年、DMF(DAWG MAFIA FAMILY)としても活動し、シーンに登場した頃と変わらないハードコアな姿勢を見せている。
ところでNetflixには、かつて世界を震え上がらせたコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルを描いた『ナルコス』を筆頭に、ドラッグ関連のハードでハイクオリティなドラマやドキュメンタリーが充実している。そうしたコンテンツはラッパーに好まれていると聞くが、A-THUGの場合はどうか――。フッド(地元)の川崎で本人を直撃した。