文化庁が補助金の全額不交付を決定
8月1日に始まった「あいちトリエンナーレ2019」。その中の企画展「表現の不自由展・その後」にテロ予告を含む抗議が殺到し、開幕3日で中止に追い込まれたが、10月8日に同展は再開された。しかし、9月末に文化庁が補助金の全額不交付を決定し、これが物議を醸している。撤回を求める運動も発生したが、問題の本質とは――。
補助金の不交付を決定した文化庁に対して、「Change.org」ではその撤回を求める署名活動が行われている。
去る9月26日、愛知県で8月1日より開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(以下、あいトリ)の「表現の不自由展・その後」(以下、不自由展)が中止になった問題を受け、文化庁は「あいトリ」の国際現代美術展全体に対する補助金約7800万円の全額不交付を決定した。
その理由は、愛知県が補助金申請した際、交付審査に必要な情報が文化庁に申告されず、手続き上の不備があったと判断したためだ。「交付審査に必要な情報」とは、文化庁ホームページによれば「展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実」のこと。つまり、愛知県は「不自由展」をめぐる一連の騒動を予測できていたのに、それを申告しなかったからだと解釈できる。
しかし、文化庁が一度採択した補助金を違法性などを検証せず全額不交付にした前例はなく、これを「国家による検閲」とし、撤回を求める署名運動も展開された。また10月1日には、文化庁が日本における現代美術の発展を目指すべく2018年に立ち上げた文化庁アートプラットフォーム事業【1】(以下、プラットフォーム)のメンバーからも、補助金不交付の撤回を求める意見書が提出された。すなわち、文化庁の内部からも批判が噴出した格好である。