――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。
スーパーフェニックス(Suphx)
マイクロソフト・リサーチ・アジアが開発した麻雀AI。略称であるSuphx(サーフェックス)は、マイクロソフトのタブレット型PC「サーフェス」にダジャレのように引っかけてある。オンライン対戦麻雀の天鳳が公開している、過去の対局データを基に、深層学習などのテクノロジーを使って育成。運に左右されるゲームでありながら、天鳳では平均8.7段を維持しており、人間のトッププレイヤーを上回る記録で戦っている。
「ちょっと面白い発表があるので、上海で取材しませんか」
8月上旬、マイクロソフトからそんなお誘いをいただいた。聞けば上海で開かれる世界人工知能カンファレンス(8月29~31日)という大きなイベントで、人間のトッププレイヤーを上回る、麻雀AIを発表するというのだ。
AIの名前は、スーパーフェニックス(通称:Suphx)。マイクロソフトが抱えるコンピューターサイエンスの専門家チームが、2年がかりで生み出した麻雀モンスターなのだという。
なかなか意地の悪いことに、この麻雀AIの開発元であることをマイクロソフトは公表せずに、Suphxが人間のプレイヤーたちを打ち倒しまくっていたのだ。その舞台になっていたのは、世界的に有名なオンライン対戦麻雀「天鳳」だ。
2006年に始まった天鳳は、日本だけではなくて海外プレイヤーたちも参加しており、約33万人たちがガチンコでその腕を競っている。厳密なスコア制度によって運営されており、プロの麻雀プレイヤーたちも多数参加している。