サイゾーpremium  > インタビュー  > 【なみちえ】──藝大JDがラップする理由
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多義的な表現技法としてのラップ

【なみちえ】「外的要因に左右されたくない」複雑な現実をとらえる技法をラップに見いだした藝大生

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――「おまえをにがす」と繰り返し、外来種のカメを川に逃すさまをラップする動画が話題となっている。そこに映し出された女性ラッパーは東京藝術大学の学生だというが、彼女は何を表現しようとしているのか?

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(写真/岩根 愛)

 今年の夏前、1分少しの短いYouTube動画がネット上で突如話題になった。アフリカ系の女性が川のほとりで“緊急対策外来種”のミドリガメ(正式名称:ミシシッピアカミミガメ)を手に持ち、「おまえをにがす」とラップする、インパクトのある動画だ。それは、“なみちえ”というアーティスト/ラッパーによるもの。ミーム的なキャッチーさがバズの要因のひとつではあるはずだが、それだけではない。ラップ・ミュージックとして高いクオリティーであると共に、“逃がす=ni**as”のダブル・ミーニングをテコにして、極めて多義的な意味の広がりを持つコンセプチュアルなアートとして精緻に組み立てられている。

 神奈川県茅ヶ崎市で生まれ育った彼女は、ガーナ出身のアカン族の父と、日本人の母の間に生まれ、現在は東京藝術大学に通っている。彼女と兄と妹の3兄妹からなるTAMURA KINGというヒップホップ・ユニットとして活動しており、くだんの動画を撮影したのは映像作家の兄である。普段は実家の隣の生活スペースを兼ねた制作スタジオで、兄妹で創作しながら過ごしている。

「みんな外に出るのが好きじゃないし、兄妹で大体のことができるので。それに、私には外に何かを求めるという発想がない。“外的要因”に左右されたくないんです」

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