――かつて、ネットは自由で開かれたものであった。だが、どんどんネットを使う人が増え、企業や公共団体がネットを基盤としたサービスを提供し、そして人や社会がネットの諸々に左右されるようになった現在、もはや「自由で開かれていればオッケー」とは言えなくなってしまった。そんなネットの中で、黎明期を知り、発展期を過ごし、そして今でもネットにあり続けてきたひとりの書き手は、いったいこの先に何を見据えているのだろうか。
●ソーシャルメディアによる情報発信・閲覧(日本)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)
クロサカ 今月のゲストのyomoyomoさんは、本業の傍ら1990年代からネットで技術に関するコラムやネット周辺の海外の文章を翻訳して紹介されています。それこそ、ブログの登場以前から、20年以上もネットで一個人の立場で情報発信を続けていますよね。
yomoyomo 最初にネットに触ったのは、92年に大阪の大学に入ってから。当時、メールは日常的に使えたけど、ウェブはまだ未成熟で、よくわからないものだった。モザイク【1】は触ったんですが、正直ピンとこなかった。この時にウェブやネットの可能性に気づいていて、もっと勉学に励んでいたらと思います。そのくらい大学は良い環境だったんですが、専攻分野への情熱が足らず、切磋琢磨する友達もいなくて文字通りの黒歴史でした。
クロサカ 僕も同時期に慶應大のSFCに入って、ネットに触れました。だから、年齢的にもネット歴でも、巷で「ネット老人会メンバー」と言われるような世代です(笑)。実際はインターネットが誕生してからすでに50年たっているわけで、90年代前半の時点では30年くらいたっていました。それを新登場と感じさせたのがウェブなんですが、その当時の僕は、正直ウェブはそのうち消えるものと思っていました。
yomoyomo 96年に地元に近い福岡で就職したんですが、Yahoo!JAPANのスタートなどネットブームに湧く東京から離れたところにいたので、いろいろなことをあきらめた時期でもあったんです。ところが、日常でウェブに触れるにつれて、自分にもまだ何かできるんじゃないかと思い始めたんです。
クロサカ 当時、どんな体験をしていました?