――創価学会の池田大作名誉会長による『新・人間革命』が昨年完結を迎えた。同シリーズは毎年ベストセラーになることから、学会員ではなくともその存在は知られているが、この本の「物語」や「商品」としての出来はどんなものだったのだろうか?
『人間革命』は第二代会長・戸田城聖の激動の半生と、教団立ち上げまでを第三代会長・池田大作が書き上げた。
出版取次大手の日販とトーハンが発表した、今年上半期のベストセラー本。昨年9月に他界した女優・樹木希林の『一切なりゆき』(文藝春秋)が両社のランキングで総合1位に、『樹木希林 120の遺言』(宝島社)も日販3位に入り、話題になった。
一方、その陰に隠れている印象を受けるのが、両ランキングで総合2位にランクインした『新・人間革命 第30巻 下』(聖教新聞社)である。これは国内最大の新宗教団体「創価学会」の池田大作名誉会長が、「聖教新聞」で25年近くにわたり毎日連載していた日本史上「最長の新聞小説」の最終巻だ。
1965年元日号~93年まで「聖教新聞」に連載された『人間革命』は、戦時中に牢獄に入れられた第二代会長の戸田城聖が出獄するシーンから物語が始まり、戸田の死後、若き山本伸一(=池田大作)が創価学会の第三代会長に就任して広宣流布の使命を引き受けることで終わる。
「『人間革命』は創価学会の真実の歴史が描かれた物語としてだけではなく、若き山本伸一や周囲の会員たちの奮闘の姿を通して、自らの悩みや苦しみの解決策を読みとっていくという、自己啓発本を50倍くらい濃くした読まれ方がされています。自らの悩みをぶつけながら同書を読み、仏法という教えの一端を涙ながらに理解し、実践していく……。これは『身読』と呼ばれ、会員として推奨される読み方のひとつとされています」とは、現役の学会員。
続編の『新・人間革命』は、会長に就任した山本がハワイに訪れて世界広布を開始するところから始まり、最終巻では長年対立してきた日蓮正宗の迫害から会員を守るために会長を辞任。その後、反転攻勢をかけて、日蓮正宗から破門されるが、それを「魂の独立」として捉え、青年たちに「創価三代の師弟の魂を受け継いでもらいたい」と訴えて、完結を迎える。
同書は創価学会という組織の中で、どのような機能を果たしてきたのだろうか? 戦後日本の宗教史を専門とする創価大学名誉教授の中野毅氏は、こう語る。