サイゾーpremium  > 特集  > 本・マンガ  > 【朝の読書】のイビツな思惑

――小・中・高等学校で推進されている「朝の読書」。毎朝、始業前の10分間で行われるこの活動は、教師、親、出版社、子どもの“思惑”が複雑に絡まる。また、読む本に関して奇妙な“規則”もある。マンガやネット文化に詳しく、「子どもの読書」も調査するライターの飯田一史氏が、各種データや現場の声からその実態を分析する!

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子ども人口と児童書販売金額
※出典:『2019年版出版指標年報』公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所

 1988年に千葉県の2人の高校教師(林公氏、大塚笑子氏)の提唱によって始められ、出版取次大手トーハンの支援も受けて全国に広まった「朝の読書」(以下、朝読)。それは、学校で始業時間前の10分間、児童・生徒が自分で選んだ本を読むという読書推進活動である。2019年6月3日時点で全国の小学校の80・6%、中学校の81・6%、高校の44・7%で実施されている(「朝の読書推進協議会」調べ)。

 この朝読は、「遅刻が減った」「落ち着いて授業に入れる」「成績が上がった」といった導入による効果が語られたことで普及していったわけだが、ビジネス的に見てもその影響力はすさまじい。14歳以下の子ども人口は09年に約1700万人だったのが18年には約1550万人と150万人も減ったが、児童書販売金額は09年に830億円だったのが18年にはなんと875億円と微増している(上図参照)。

 また、毎日新聞社と全国学校図書館協議会(SLA)による学校読書調査では毎年5月の1カ月に読んだ本の冊数を調べているが、不読率(1冊も読まない人の割合)については97年に中学生が約半数、高校生が7割、98年に小学生が17%と過去最高に達した。1カ月の平均読書量に関しては、97年調査では小学生が6・3冊、中学生が1・6冊、高校が1・0冊だった(「毎日新聞」97年10月28日付朝刊の「[特集]第43回学校読書調査(その5)平均読書量」、同紙98年10月28日付朝刊の「[特集]第44回学校読書調査(その1)全国学校図書館協議会理事長・笠原良郎さん」)。それが朝読普及に伴い、最新の18年実施分では、不読率は小学生8・1%、中学生15・3%、高校生55・8%、読書冊数は小学生9・8冊、中学生4・3冊、高校生1・3冊となっている。20年前と比べれば、「小中学生の本離れ」は劇的に改善されているのだ(『2019年版読書世論調査』毎日新聞社)。

 出版業界は96年に売り上げがピークに達し、以降は下落の一途をたどった。一方、子どもの読書は90年代には危機的状況にあったが、その後、V字回復を遂げた。結果、各出版社が朝読需要を見込んで児童書市場にこぞって参入している、というのが近年の状況である。

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