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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第66回

【クロサカタツヤ×丸茂正人】Wi-Fiの電波が目や触覚になる? 人を“安心させる”技術を売り込む起業家の挑戦

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通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

――離れたところから電波をつかって、人がいて、動いているのか、または熟睡しているのか、知ることができる技術がある。アメリカ生まれのそんな技術を、日本に持ってきてビジネスにしようとしている丸茂正人氏。日本の通信事業に長くたずさわってきて、たどり着いたこの技術は、一人暮らしの高齢者の見守りサービス、多機能トイレや空き家の監視といった用途だけでなく、屋内や地下ではGPS替わりの位置測位もできるという魔法のような技術。丸茂さんはこの技術とどのように出会い、そしてそれを使って何を実現しようとしているのか?

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●高齢期の暮らしの動向
資料:総務省統計局「住宅・土地統計調査」(平成25年)
(注)主世帯とは、住居と生計を共にしている家族や一戸を構えた単身者の内、同居世帯(1つの住宅に2世帯以上居住している世帯のうち、家の持ち主や借り主でない世帯)以外の世帯を指す。出典:内閣府「平成30年版高齢社会白書に掲載された資料より」
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Origin Wireless Japan社ウェブサイトより

クロサカ 今月のゲストは、Wi-Fiを使って人の行動やデバイスの測位を可能にする、まったく新しい技術を開発しているオリジンワイヤレスの丸茂正人さんです。丸茂さんとは、10年ほど前に、とある通信事業者の支援をしていたときに知り合いました。そもそもこれはどんな技術なんですか。

丸茂 一般的に、電波はコミュニケーションのためのものと思われていますが、実はレーダーのように物体を検知することにも使えます。日本では、ほとんどの場所でWi-Fiの電波が飛び交っていますが、それを使ってどこに人がいるのかとか、静かにしているのか動き回っているのかとか、また近ければ呼吸回数や睡眠時に熟睡しているのか浅い眠りなのか、といったことがわかります。

クロサカ すごい! でも、Wi-Fiには、そもそもそんな機能はないですよね。一体、どうなっているんですか?

丸茂 何をやっているのかというと、Wi-Fiの基地局から出た電波は直接スマホなどのデバイスに届くだけでなく、屋内なら壁や天井に反射してから届く電波もあります。そんなふうに複数の経路で電波が届くことをマルチパスといって、たくさんの電波が飛んでいる状態のことです。この複数の電波を解析すると、屋内で何が起こっているのか判定できるんです。

クロサカ 紙の上で直線を適当に何本も引いてみると、それらが交わる点は、場所がはっきりします。そんな感じですね。

丸茂 この技術は応用範囲が広くていろんなことに使えるのですが、いま弊社で実現しようと思っているのが、“高齢者の見守り”サービスです。高齢化社会を迎えて一人暮らしの方が増えています。現在そうした方を対象に、ウェアラブルデバイスを身につけてもらうもの、室内にカメラを設置するもの、人感センサーを張り巡らせるものなど、いろいろなサービスがあります。ほかにも、郵便局による月1回の高齢者訪問サービスや、象印がセンサーを内蔵した電気ポットの稼動を検知して安否を確認するサービスなどもあります。ですが、どの方法にも必ず、時間的、空間的な死角があって、その死角で何かが起きた場合には、どうしても発見が遅れてしまいます。死角をなくすために、カメラやセンサーを増やすと、今度はプライバシーやコストといった問題が出てきます。私たちの技術をセンシング【1】に使えば、家の中ならどこでも24時間、安価に見守り続けることができる。

クロサカ なるほど。僕も通信業界の仕事をしていて、技術について人前で話すことも多いですが、「電波は通信のためのもの」という思い込みは確かにありました。でも、説明をうかがうと、確かに技術的に理屈は通っています。

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