――近年、さまざまな形でインターネットの歴史を振り返る回顧企画が行われている。リアルな生活にも大きな革命を引き起こしてきた一方、ネットの片隅では、時に法を犯しながらその世界を作り上げていった。ディープウェブ、サイファーパンクなど、インターネットの「裏」面の現在とは?
スティーブ・ジョブズも禅思想に傾倒していたことは有名ですよね~。
89年にWorld Wide Webの仕組みを考案し、『Webの創成』【1】を記した元CERNの研究者、ティム・バーナーズ=リーが、18年末に行われたロイターによるインタビューで「ウェブの現状に失望している」と発言し、大きな話題となった。00年代頃から急速に進行していったインターネットのインフラ化は、GAFAなどの一部大企業による独占、そして、それに反発する中国、ロシアをはじめとする各国政府の管理など、ネットの世界に強大な権力と統制をもたらし、その強制力は、現在進行形で強まっていくばかり。
World Wide Webが生まれたての時代に人々が目指していたのは自律分散型システムによって、個人が自己の責任のもとに自由なつながりをもたらす民主主義的な空間であった。しかし、そんな理想郷はいつの間にか権力による独占管理やフェイクニュース、ヘイトスピーチ、さまざまな犯罪が横行する空間に成り果ててしまっている。
そして、ネットの自由を求める人々の最後の望みとなっていたのが「ダークウェブ」だ。クロムやファイアーフォックスなど通常のインターネットブラウザでは到達できず、GAFAや政府の管理さえも届かないその空間では、匿名通信によって反政府系の情報交換や違法商品の取引などが活発に行われている。日本でも、18年のコインチェックによる仮想通貨流出事件で流出したNEMはダークウェブ上でロンダリングされていることが話題となり、ブロガー・文筆家の木澤佐登志氏による『ダークウェブ・アンダーグラウンド』【2】や、ロンドンのシンクタンク「デモス」に所属するジェイミー・バートレットの『闇ネットの住人たち』【3】、そして、セキュリティ集団スプラウトによる『闇ウェブ』【4】など、「闇」の内側を詳細に描く関連書籍も出版されている。
いったい、インターネットはどこへ向かっていくのか? 地下水脈のようにして流れる「自由」の系譜を振り返りながら、その深層をのぞいてみよう。