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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第138回

『アス』モンスターは「私たち」――特権と罪悪感の恐怖を描くホラー作品

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『アス』

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少女・アデレードは家族と共にビーチへリゾートに訪れる。そこで彼女は自身と瓜二つの少女に出会い、トラウマを抱えてしまう。それから30年後、トラウマを克服した少女は大人になり、家族と共に幸せな時間を過ごしていた。ある日一家は再びビーチへ訪れた。そこで出くわしたのは……。
監督:ジョーダン・ピール、主演:ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デュークほか。今夏公開予定。

 ホラー映画にはさまざまなモンスターが登場する。幽霊だったり、ゾンビだったり、殺人鬼だったり……。だが、2019年春、アメリカで大ヒットしたホラー映画『アス』のモンスターはUs、つまり「私たち」だ。

 ヒロインのアデレードは30過ぎの黒人女性。インテリで優しい夫ゲイブ・ウィルソンとの間に中学生の娘と小学生の息子を持ち、幸福に、リッチに暮らしており、この夏も海辺のリゾートにある別荘へやってきた。

 しかし、ある晩、別荘の前に誰か立っている。男と女と子どもが2人。真っ赤なツナギを着て、手をつないで立っている。こんな夜に誰だろう、とよく見て、アデレードは慄然とする。

「あれは……私たちだ」

 その4人は、アデレードと夫ゲイブ、それに2人の子どもたちと瓜二つだった。彼らは家に押し入ってきて、アデレードたちの生活を奪おうとする。

「一番怖いのは自分自身だ。つまりドッペルゲンガーだよ」

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