――市場に定着した感のある「アイコス(IQOS)」などの加熱式たばこ。「煙が出ない」「有害な化学物質の発生量が少ない」といった印象から人気が拡大しているが、健康への影響は研究途上。医師の間では「程度の差はあれ、たばこ同様に悪影響がある」との見解が大半だ。ハームリダクション(被害低減)の観点からも意見が分かれている。本稿ではそういった加熱式たばこの現状と問題点を整理・考察していく。
(絵/きたざわけんじ)
2018年のJTの調査では17.9%にまで下がった喫煙率。その一方で、喫煙者の中で急速にシェアが拡大しているのが「アイコス(IQOS)」「グロー(glo)」「プルーム・テック(Ploom TECH)」などの「加熱式たばこ」だ。日本のたばこ市場全体に占める割合はすでに2割超とされており、今後も利用者の増加が見込まれている。
人気の背景には複数の要因が考えられるが、まずひとつは「たばこ特有のニオイの少なさだ。
そもそも加熱式たばことは、タバコ葉を電気で加熱し、ニコチンを含むエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または個体の粒子)を吸引するもの(プルーム・テックは詳細の仕組みが異なる)。タバコ葉を燃やす紙巻きたばこのような煙は出ず、傍目には「蒸気が出ているだけ」のようにも見えるのが特徴で、実際にニオイも薄い。
アイコスのホームページには「火を使わず、蒸気だから、においも少なく、ヤニもつきにくく、灰も出ず、火災の心配も少ない。そして何より、屋内の空気を汚さず、周りの人にもイヤな思いをさせにくい」との説明がある。特にニオイの薄さが評判なのがプルーム・テックで、JTが行った「6段階臭気強度表示法による調査」では、紙巻きたばこが「4.強いにおい」だったのに対し、プルーム・テックのシリーズは「1.やっと感知できるにおい」という結果だった。
もうひとつの人気の要因は「有害物質の減少」だろう。
アイコスのホームページでは「IQOSのたばこ蒸気は約90%も有害性成分の量を低減」と大きな見出しで説明。グローも「9つの優先すべき有害性物質レベルが大幅に低減している」としている。
ただ、これらのデータはたばこを販売する会社側が出したもの。「自分たちに都合のいいデータばかりを出しているのではないか?」という疑いを持つ人も当然多いだろう。医師側からもそのような声は多く上がっている。