――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。
コザでビールを造り続ける大浜安彦さん。ビアフェスなどのイベントにも積極的に参加しているから、本土でその腕前にふれる機会も少なくないはずだ。
沖縄でビールといえば、なんといってもオリオンビールのイメージが強い。国内第5位のシェアを誇る、ビール党なら知らぬ者のない銘柄だ。
しかし近年、その牙城の一角を切り崩すかのように、いくつかのクラフトビールが台頭しているのをご存じだろうか。今回スポットを当てたのは、沖縄ではまだまだ珍しいマイクロブルワリー、コザ麦酒工房だ。
那覇市内から車で40分ほど北上したエリアにあるコザは、米軍キャンプに近い立地で、林立する英語の看板が特徴的な街。ブルワーの大浜安彦さんはここに根を張る「とおやま酒店」の3代目である。ではなぜ、酒屋の主がクラフトビールを造ることになったのか?
「数年前から海外のビールを少しずつ仕入れるようになったのですが、たまたま出会ったアメリカ産のIPAが、クラフトビールに目覚めるきっかけでした。それまで飲んでいたピルスナーとはまったく違う香りに衝撃を受け、すぐに各地の地ビールを飲み歩くようになりました」
その時点では、自らビールを造ることになるとは夢にも思っていなかった。むしろ、とおやま酒店の得意ジャンルはワインで、大浜さんもワインアドバイザーの資格を持っているほど。
しかし、研究を進めるうちにマイクロブルワリーという業態があることを知った大浜さんは、「その気になれば自分でもビールが造れるかも……」との着想に至る。このタイミングでとおやま酒店の2階のテナントが空いたのは、絶妙な追い風だったといえるだろう。