――派遣型マッサージ店の女性に暴行した俳優、不倫に溺れた大統領、数多くの女性と不貞行為にふけった世界的アスリートなど、セックスを取り巻く事件やスキャンダルは枚挙に暇がない。こうした事件の加害者とセックス依存性の関連についてリポートしてみたい。
ウェブマガジン「週プレNEWS」より。
彼女に対しては、相手を試すかのようなアブノーマルなプレイを繰り返すばかりか、他の女性たちとも接点を持つ。それでも、欲求は収まるどころかどんどん増幅していき、街を歩けば、干した布団を叩いている音がセックスの音に聞こえ、周りの人間たちが皆セックスをしているように見えてしまう。セックスがしたくてたまらず、叫びだしたいほどの衝動――。これは、ウェブマガジン「週プレNEWS」で連載されているマンガ『セックス依存症になりました。』の冒頭場面だ。作者の津島隆太氏は、自らの実体験をもとにこの作品を描いたという。
「セックス依存症の人は、もう勃起もしないのにいつまでもマスターベーションをしようとしたり、性欲だけでは説明がつかない行動をとることがよくあります。私のクリニックでの調査では痴漢している人の約半数は痴漢の時に勃起していないというデータもあります。勃起したいとか射精したいといった性的欲求を超えて、セックスが強迫的な囚われになってしまっているのです」
こう話すのは、大森榎本クリニックの精神保健福祉士・社会福祉士で、このマンガを監修している斉藤章佳氏。斉藤氏は、痴漢の実態を明らかにした専門書『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)の著者でもある。
このマンガの冒頭、医師は主人公である津島隆太氏に向かって、「診断の結果ですが、あなたがセックス依存症であることは間違いないと思われます。私の経験上このまま放置致しますと、津島さんが性犯罪を犯し逮捕される確率は非常に高いといわざるをえません」と告げる。このセリフを見た読者の中には、「自分もセックス依存症なのだろうか?」とドキッとした人もいるかもしれない。だがセックス依存症とは、医学的にどのような症状の人をいうのだろうか?
「『セックス依存症』という正式な病名はなく、あくまで俗称です。俗称であるがゆえに、セックス依存症の正式な定義というものはありません」と解説するのは、福井裕輝氏。福井氏は、性障害専門医療センター(SOMEC)の代表理事として、性犯罪加害者の治療にあたっており、『ストーカー病―歪んだ妄想の暴走は止まらない―』(光文社)の著者でもある。
「アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5ではパラフィリア症候群というカテゴリーがあり、パラフィリアは日本語で性嗜好障害と訳されます。DSM-5ではこのパラフィリア症候群をさらに分類して、窃視障害・露出障害・窃触障害・性的マゾヒズム障害・性的サディズム障害・小児性愛障害・フェティシズム障害・異性装障害・他の特定されるパラフィリア障害・特定不能のパラフィリア障害と分けています。これらパラフィリア障害は主に犯罪性のある行為を中心に構成されています」(福井氏)
さらに前出の斉藤氏によると、パラフィリア症候群も大まかに接触型と非接触型に分けられるという。痴漢を含む窃触障害と、そのほか、被害対象と接触しない盗撮、露出、下着窃盗などはやや性格が異なるというのが斉藤氏の解説である。