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町山智浩の「映画がわかるアメリカがわかる」第135回

『バイス』ブッシュ大統領を操りイラク戦争を仕掛けた史上最強の副大統領

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『バイス』

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イラクの核兵器開発をでっち上げ、戦争へと導いたディック・チェイニー副大統領の伝記映画。1960年代半ば、ただの飲んだくれ青年だったチェイニーは、妻の叱咤激励により政界を目指す。みるみる頭角を現した彼は、やがて副大統領の地位まで上り詰める。
監督:アダム・マッケイ、主演:クリスチャン・ベール、エイミー・アダムスほか。4月5日全国公開。

『バイス』とは「副」の意味で、「史上最強の副大統領(バイスプレジデント)」と呼ばれたディック・チェイニーの伝記映画である。

 チェイニーはブッシュ大統領を操り、イラク戦争に導いたといわれた。冷徹で、頭が切れる陰謀家、ダース・ベイダーのような黒幕、それがチェイニーのパブリック・イメージだった。

「チェイニーはアメリカの政治を操り、世界の歴史を変えた」。『バイス』の監督アダム・マッケイは言う。「でも、チェイニーが何者なのかアメリカ人ですらよく知らない。だからこの映画を作ったんだ」。

『バイス』は、1962年、クリスチャン・ベール扮する21歳のチェイニーが酔っ払い運転で逮捕されるところから始まる。

 チェイニーは負け犬だった。多くの政治家を輩出した名門イェール大学に入るも、成績不良で叩き出される。チェイニーの最終学歴は地元の公立ワイオミング大学。現在の全米大学ランキングでイェールは3位だがワイオミングは183位。そして、チェイニーが就いた職業は、ワイオミングの荒野に立ち並ぶ電信柱に電線を架設する作業員。人生の出発点でつまづいたチェイニーは、毎晩飲んだくれて酔っ払い運転で逮捕される(2度も!)。

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