――前記事で紹介した美人酒の中から5種をピックアップ。美人命名の理由は、酒蔵に直接取材! 味わいまで、たっぷりご堪能を。
●舞い上がる美酒
舞美人
蔵付酵母仕込み 山廃純米 無濾過生原酒(福井県)
製造元:美川酒造場 1887年創業
戦前まで「朝鶴」という銘柄の酒を造っていた美川酒造場が、昭和24年に造り始めたのが「舞美人」だ。蔵のある地に、江戸時代の福井藩主・松平氏が狩りに来た際、村一番の美人が舞を献上したという逸話を元に命名された。原料米も酵母も地元産を中心に使い、米は昔ながらの和釜で蒸し上げ、桜で出来た木槽で酒を搾るという手間暇かけた造り方をしている。このことによって、福井の同蔵にしか成し得ないオンリーワンの酒が出来上がる。淡麗辛口が流行した時代にも信念を曲げることなく、「濃醇旨口」の酒を目指し造り続けてきただけに味わいは独特。エチオピアの主食であるインジェラのような香り、次にまろやかな甘さとリースリングのような際立った酸味が感じられる。まるで若き日の樹木希林のように、躍動感と個性にあふれ、感情豊かで唯一無二の力強い女性をイメージさせる。ハマってしまうとよそ見できない、かけがえのない美人である。