空席を埋めるレタッチ技術
無料招待や空席を暗幕で覆うなど、コンサートチケットの券売が芳しくない“当日の席埋め措置”はもちろんだが、マスコミ各社や音楽系ウェブメディアへのニュース配信用に送付するライブ写真にもギミックがある。とあるレタッチャーは「人を増やしてほしい」と依頼され、別のライブ写真から合成。果たして、そこまでする意味とは……。
『沢田研二という生き方』(青弓社)
昨年10月、さいたまスーパーアリーナにて開催予定であった自身の公演を「9000人の予定が7000人しか集客できていなかった」ことを理由に急遽中止し、世間を騒がせた沢田研二だが、また新たな問題が勃発。一部の週刊誌によると、去る1月19日から行われた日本武道館での3日連続公演にて、空席を埋めるために大量の“無料招待券”【1】がばら撒かれたというのだ。その記事では、ほぼ満席だった初日公演で、キャパ約9000人のうち、実に4割程度が招待客であったと報じられている。
1回の公演で3000席以上を無料で招待したという事実には、驚くと同時に太っ腹でもあるが、音楽業界関係者によれば、これまでもさまざまな手法で空席を埋めるための対応が取られてきたという。まずは中堅イベントプロモーターA氏が、自らの経験として、こう証言する。
「チケットの販売状況が芳しくない状態のままで公演日程が迫ってくると、空席の対策はイベンター(興行主)の判断になります。その措置はイベンターの考え方によってマチマチなので一概には言えませんが、まずは公演告知やメディア露出といったプロモーションに奔走するのが第一。主催や協賛名義の付いているメディア(テレビやラジオ)がある場合は、その局で告知の増加という正攻法に頼ります。公演日まで1カ月以上ある場合は、集客が見込める前座やサポートアクトを追加でブッキングしたり、近年では影響力のある有名人やインフルエンサーのSNSで告知してもらうこともあります。ただし、後者の場合は追加のプロモーション費用を捻出しなくてはなりません」
このような正攻法でも効果が出なかった場合に行われる措置が無料招待となる。もちろん、どんなイベントにも、ある程度の招待枠は用意されるが、それとは異なる形態について、長年海外アーティストを担当してきたレコード会社勤務B氏が詳細を語る。