――18年11月、「週刊新潮」(新潮社)が報じた芸能事務所社長による顔面しゃぶ鍋事件が話題となった。本件は、証拠の動画が残っていたことにより大事となったが、テレビ業界や芸能界の関係者たちからすればこうした案件は日常茶飯事。いくら放送上ではコンプライアンスを装っていても、パワハラはいまだにまかり通っているようだ。
家父長制度的な慣習が、いまだに社会のすみずみで生きている日本。小学校高学年あたりから、まるでサル山のように、お互いにマウントを取りあい、そのまま大人になっていく……。(絵/鈴木裕之)
「奈良判定」など数々の疑惑で辞任に追い込まれた日本ボクシング連盟・山根明元会長、「悪質タックル」で部内における“恐怖政治体制”が明るみとなった日本大学・内田正人前監督など、18年は、「パワハラ」やそれと思わしき行為を疑われたスポーツ界の著名人たちが、世間から集中砲火を浴び断罪を受けた1年となった。
なんといっても、2020年は東京五輪を迎える日本にとって記念すべき年。その前に膿を出し切るように、普段ではあまり中身をのぞかれることがなかったスポーツ各界の内部事情が、ここぞとばかりに赤裸々となった感がある。ただ、パワハラ問題に注目が集まったのはスポーツ界だけではない。この動きに呼応したかのようにエンタテインメント業界に属し、また体育会系のノリが強いとされてきた「芸能界のパワハラ」にも視線が集まった。
18年3月には、アイドルグループ・愛の葉Girlsの大本萌景さんが自殺。遺族は、パワハラやブラック労働が原因だとし、当時の事務所を後に提訴している。続く7月には、劇団四季の人気ミュージカル・『CAT'S』に出演していた若手俳優が、スーパーバイザーである男性のパワハラ指導に耐えかねて自殺未遂を起こしたという報道が出回った。
さらに象徴的だったのは「顔面しゃぶしゃぶ鍋事件」だ。11月、某芸能プロダクション社長が部下である男性社員の顔を煮えたぎる鍋に押し付ける動画が流出。社長の残虐性もさることながら、そのパワハラ行為を制止することなく宴席で共に楽しんでいたクライアントなど、権力関係を露骨に絵に描いた場の雰囲気に世の非難の声が集中した。
かねてから「パワハラが横行している」と噂されてきた芸能界だが、関係者の声を集めてみると、ニュースとして報じられた内容は氷山の一角であることがわかってくる。
「芸能界のパワハラなんて、事例を挙げればきりがないですよ」そう話すのは、テレビ番組制作会社に勤務するA氏だ。