――市民権を得て久しいBLだが、このジャンルのマンガが今、相次いで東京都による『不健全図書』に指定されている。都と版元、双方の言い分を聞きつつ、“権力”と“腐女子の欲望”をめぐる現状をリポートする。
●東京都不健全指定図書に含むBLマンガ冊数の変遷
それまで不健全指定を受ける図書類は、主に男性向けのエロ本が大半だったが、2017年度はついにBLマンガが過半数を締めるようになった。
本誌誌面でBL作品を扱うとき、「BL(ボーイズラブ)」と注釈付きの表記をしなくなってずいぶんたつ。もはやこの2文字が意味するところは世間に広く知られ、説明は不要になった。
だが、これだけ広く知られたがゆえか、BLを取り巻く状況にはこの数年で大きな変化が起きている。それが、都道府県の条例における「有害図書(東京都では『不健全図書』)」指定の増加だ。
影響力が大きい首都・東京を例に取ると、東京都青少年健全育成条例に基づいて「不健全指定図書類」とされる出版物はこの10年余りで減少傾向にある。だがその中で、BL作品は着実に指定される頻度が上がっているのだ(グラフ参照)。2017年度は不健全指定を受けた出版物が年間27作、そのうち16作がBL作品だった。過半数を超えたのはこの年が初めてとなる。18年度はまだ半ばだが、現時点で14作中10作がBLで、やはり今年も過半数を大きく超えることが予想される(どういった作品が引っかかったのかは下段の18年度11月までに不健全図書指定されたBLマンガレビューを参照)。不健全指定に占めるBLの割合の増加には、従来よくやり玉に挙げられていた実話系エロ本の類が出版不況で休刊し、ほかに対象となる出版物が減っているという、相対的な変化による影響もあるだろう。だが、この2年でほぼ毎月コンスタントに、1冊以上のBLマンガが指定され、17年7月にはまとめて3冊が一気に対象となるなど、「目をつけられた」感は否めない。
マンガ以外も含むBLというジャンルは年々拡大し続け、市場規模は15年時点で220億円(矢野経済研究所調べ)と推測されている。これは割り箸市場(197億円)より大きい。これだけ広がったせいで、BLは行政に“見つかった”のか。
まずは前提となる、東京都における不健全指定までの流れを、当の東京都青少年・治安対策本部担当者から説明してもらおう。