『誰?-WHO AM I?』(ブックマン社)
先だって、「週刊文春」が話題のCM「ハズキルーペ」の会長にインタビューした記事を掲載。そのなかに衝撃的な話があった。現在、起用している俳優らのギャラを明かしてしまったのだ。渡辺謙は2億円。舘ひろし8000万円。武井咲7800万円。菊川怜7500万円と、驚きのギャラに「そんなに貰うの!?」と驚愕した人も少なくない。
ちなみに、武井と菊川は同じ事務所所属で、菊川が先輩なのに後輩の武井の方が300万円高い。そんな余計なことまで話題になってしまった。
本来、芸能人のギャラは非公開。映画会社や企業でも公に明かすことはタブーとされている。芸能関係者が話す。
「初めてのCM効果で売り上げが急激に伸びたことで、あまりCM業界の事情など知らない会長がつい口をすべらせてしまったのでは?今後もハズキルーペは大物を起用して新たなCMを制作するという話があるが、出ればおおよそのギャラがわかってしまうし、ギャラが魅力で出たのか、そんな噂が出るのは必定。いくら高額でも尻込みする人も出てくるのでは」
CMで話題先行の企業ほど危ないものはないと言われているが、まさにその典型的な例とも言える。それほどCMは当たれば絶大な効果がある証明にもなったのだが、広告代理店関係者はこう話す。
「テレビCMが話題になれば売り上げは急激に伸びる。当たれば止められなくなる。かつてライザップはダイエットのCMで次々とタレントを使い、使用前・使用後を“結果にコミットする”のキャッチコピーで宣伝。大幅に会員を増やすことに成功した。今年11月、事業を広げ過ぎたことにより赤字に転落。成り上がり的な会社にありがちなこと。稼いで太った会社が、ダイエットした。そんな笑話になっているほどです」
さて、昔から芸能人のお金の話は異性の話と同じくらいに関心が高く、週刊誌でも定期的に記事になる。俳優のドラマ1本当たりのギャラやCMのギャラといった類のものだが、当然、金額には「推定」の文字が入る。
「根拠なく金額を出しているわけではない。芸能人や所属事務所からではなく、支払う側の映画会社や広告代理店から話を聞いているので、限りなく本当に近い。極端には違わないはずです。ただ、推定としているので、ギャラを明かしてもクレームがくることはない(笑)」(女性誌記者)
ギャラは一般の人にとっては、「へぇー、こんなに貰うの」とかっこうの井戸端会議のネタになるが、関心を持つのは芸能人もしかり。
隣の芝生は気になるもの。ライバルたちがどれだけ貰っているのか、芸能界の関心も高い。
それが時には事務所とのトラブルになることもある。「なんであの子はあんなに貰っているのに、私はこんなに少ないの」と事務所に不信を抱き、やがて独立や移籍騒動に発展することも少なくない。
事務所とタレント間のギャラの配分は事務所によって違うが、本来、事務所はギャラのマネージメント料として20%~30%として取るのが業界の相場とされる。
新人のうちは給料制で売れ始めると歩合制になることも多い。ホリプロのようにずっと給料制のところもあり、和田アキ子もいまだに給料としてもらっている。逆に吉本のように歩合制でも事務所の取り分が多く、営業など数をこなさないと、十分な金額が入ってこないところもある。明石家さんまクラスの超売れっ子になれば、ギャラは天文学的数字になる。苦しくても吉本で「さんまを目標」に目指す。ギャラが安くても仕事には困らないのが吉本のメリット。独立する芸人は極端に少ない。
一方、仕事の数よりも質で選ぶならCMの仕事。撮影は1週間程度で終わり、後は3か月、半年、1年の単位で契約すれば、勝手にテレビに流れるだけで千万円単位のギャラが入る。ギャラの額は人気と実力、経験が加味される。渡辺謙が2億円というのも「ハリウッドスター」という肩書きがモノを言っている。
「ハズキルーペがギャラを公表したことで、謙さんクラスになると、億単位のギャラが必要と固定観念が付き、彼らを使いたいと考えていた企業が二の足を踏む可能性もある。企業は安くて効果のあるタレントを使いたいのが本音。最近は旬の若手ならまだギャラは押さえて使えると、オファーが増えている」(広告代理店幹部)
芸能界のタブーを破ったギャラの公開。今後、様々な波紋を呼びそうである。
(敬称略)
二田一比古
1949年生まれ。女性誌・写真誌・男性誌など専属記者を歴任。芸能を中心に40年に渡る記者生活。現在もフリーの芸能ジャーナリストとしてテレビ、週刊誌、新聞で「現場主義」を貫き日々のニュースを追う。