――ヒップホップのカルチャーに限らず、いち映画/ドラマとしても十二分に楽しめる作品を3人の識者がレビュー。
[小林's CHOICE]すんなり入り込める物語性
『UNSOLVED:未解決ファイルを開いて』
実在の犯罪事件に関する捜査の顛末を描く事件検証ドラマ・シリーズ「未解決ファイルを開いて」中の1シーズン分(全10話)として撮られた作品。そのため、主役の刑事たちもそうであるように、殺害されたビギーと2パックのことを知らなくとも、また、ヒップホップに対して手垢のついたイメージや偏見しか持っていない人でも、すんなり入り込める仕上がりに。90年代末の時点で、さまざまな資料を基に、書籍『誰がラッパーを殺したのか?』(扶桑社)にまとめた筆者としては、制作サイドはアメリカのヒップホップ裏事情、撮影時点での最新の関連資料もしっかり読み込んでうまくドラマに反映させたと感じた。
[荏開津's CHOICE]まるで海外版“朝ドラ”感
『ロクサーヌ、ロクサーヌ』
深夜テレビの“ラップ・バトル”、もしくはクラスで話さないあの子が聴いている音楽、YouTubeでお気に入りのK-POPボーイズ・アイドルの動画の次にレコメンド――。今やヒップホップ/ラップに出会う機会はさまざまなのに、一歩踏み込んでその歴史について学ぼうとすると、紋切り型に見える“ゲットー”とか“ギャング”といった単語が並ぶ本を読むしかない。でも実際に黎明期のそうした現場に行けたなら、類型的ではない僕たちと変わらない人間くさい人たちがいたわけでしょう。本作は、その証明のようなドラマ。昔のNHKの朝の連続ドラマが“ストリート”を取り上げたように描き出します。