――日本でも話題を呼んだ『ゲットダウン』をはじめ、『ヒップホップ・エボリューション』『ルーク・ケイジ』など、ある分野のドラマが活況を見せている。本稿ではNetflixで配信されている“ヒップホップ・オリジナル作品”に着目し、作品の内容や量産される背景など、配信されている作品を軸に多角的に検証していく。
ネットフリックス・オリジナル作品のイメージを強く印象づけた『ハウス・オブ・カード 野望の階段』。周知の通り、主演のケヴィン・スペイシーは〈#MeToo〉問題にて主演を降板するハメになったが、それもある種のプロモーション効果を生んだとは、なんとも皮肉である。
1970年代、ニューヨークのブロンクスにて誕生――。その後、日本を含む世界中の若者を虜にし、単なる音楽のいちジャンルとしてだけではなく、アートやファッションなど、さまざまな分野に影響を与えるほどの存在となった〈ヒップホップ〉というカルチャー。例えば、この日本でもフリースタイルブームに端を発し、ここ数年は日本語ラップ・シーンも大きな注目を集めている。
一方で、映画など映像の世界においても、世界的にヒップホップをテーマにした作品は急速に広がりを見せている。近年では、ギャングスタ・ラップの元祖ともいわれるグループ〈N.W.A.〉を主人公とした伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15年)や、25歳の若さで命を落とした伝説的なラッパー、2パックの生涯を追った『オール・アイズ・オン・ミー』(17年)といった作品は日本でも上映されヒットを記録。そのほかにもナズやア・トライブ・コールド・クエストといった一世を風靡したヒップホップ・アーティストのドキュメンタリー映画がコアなヒップホップ・ファンを中心に話題を呼んだ。
そんな中、いわゆるSVOD(サブスクリプション・ビデオ・オン・デマンド)と呼ばれる定額制動画配信サービスの世界においても、ヒップホップをテーマにしたコンテンツは熱い注目を浴びている。その最先端を走っているのが、世界一の会員登録数を誇るアメリカ発のNetflix(以下、ネットフリックス)だ。今回、ヒップホップをはじめ、さまざまなカルチャーに通じている文筆家であり、映画への造詣が深い荏開津広と小林雅明の両氏のコメントも交えながら、ネットフリックスでヒップホップ作品が人気となっている背景と、その裏側にある課題や問題点なども探っていきたい。