毎年物議を醸す年末歌番組
賢明な本誌読者であれば、利権にまみれたレコ大と紅白歌合戦の選出については既知のことだろう。そんな中、紅白に関しては、防弾少年団、東方神起らの人気K-POPの出場はない、という見方が強い。では、ほかのアーティストは、どうだろうか? 関係者の話に耳を傾けてみたい。
『NHK紅白歌合戦』の公式HP。
この時期になると、芸能界は年末の音楽2大祭典の話題で持ちきりだ。毎年その選考が物議を醸す『輝く!日本レコード大賞』の大賞は、昨年末の時点で早くも欅坂46の受賞が既定路線だったという。スポーツ紙の音楽担当記者は語る。
「昨年は乃木坂46が初の大賞を受賞しましたが、その時点でCDの売り上げや勢いからして『来年は欅坂46で決まりだろう』ともっぱらでした。乃木坂46や欅坂46が所属するソニー・ミュージックは、かつては賞レースであるレコ大に非協力的なスタンスでしたが、昨年には乃木坂46、一昨年には西野カナが大賞を受賞するなど、変化が見られます。その理由として、かねてレコ大を牛耳る“芸能界のドン”ことバーニングプロダクション周防郁雄社長と親しくなったことが噂されています」
周防社長といえば、その甚大な影響力ゆえに一時期はレコ大の表向きの主催である日本作曲家協会の重鎮・叶弦大氏らから反旗を翻され、一部週刊誌などに「レコ大の買収を告発」といった記事で話題を集めた。
「ドンにしてみれば、作曲家協会の反旗など、どこ吹く風。周防社長と対立した叶氏は昨春に会長職を追われ、事実上、協会は再びその支配下に置かれることに。一連の反乱劇も、結果的には周防社長の凄みを改めて業界内に知らしめる格好となりました」(同)
だが、欅坂46の対抗馬としてにわかに注目を集めているのがDA PUMPだ。今年リリースした約3年半ぶりのシングル『U.S.A.』が大ヒットし、社会現象をも巻き起こしている。実績も話題性も十分なうえ、所属事務所は周防社長の盟友・平哲夫氏率いるライジングプロダクション。加えて、所属レコード会社も周防社長と昵懇のエイベックス系列で、大賞の有力候補と報じられたことも。だが、受賞の可能性は低いという。
「レコ大の大賞は、基本的に日本で作られた楽曲が対象。過去には大ヒットを記録した故・西城秀樹の『YOUNG MAN』や映画『アナと雪の女王』の主題歌『レット・イット・ゴー~ありのままで~』も洋楽のカバーということで外されています。『U.S.A.』に関しても同様の理由で大賞ではなく、特別賞に落ち着くのでは、というのが大方の見方です」(レコード会社スタッフ)。
その他、有力候補として名前が挙がるのは、今年『Lemon』がヒットした米津玄師、デビュー40周年のサザンオールスターズだというが、「米津はほとんどテレビ番組に出演しないことで知られており、大賞受賞の絶対条件である中継番組への出演が難しいとか。それに所属レーベルのソニーにしても、米津を無理に説得するより欅坂46に初受賞させたり、乃木坂46に連覇させるほうがメリットがあると考えるハズ。同様に、サザンに関しても現時点では出演の可能性は低いとのことです」(同)
また、賞の特性により、実績や知名度がなくても獲得できるチャンスがあることから、レコ大各賞の中でも最も政治色が強いとされる最優秀新人賞についてはこんな話も。
「今年は、すでに夏くらいから日本音楽事業者協会(音事協)の前会長であるプロダクション尾木の尾木徹社長がプッシュしている沖縄発女性ダンス&ボーカルグループ『Chuning Candy』で決まりといわれていました」(前出・スポーツ紙記者)
大方の業界関係者は同グループを本命と見ているようだが、一方でこんな証言もある。
「ただ、3月にリリースしたメジャーデビューシングルの売り上げが芳しくなく、『さすがに最優秀新人賞はやり過ぎでは!?』という声も出ています。それに、昨年は男性歌手のNOBUが最有力候補と目されながら、事前にそのことが一部マスコミに漏れたことから、わずかな票差でハロー! プロジェクトの女性アイドルグループ・つばきファクトリーが受賞するどんでん返しもありました。今年もすんなりとは決まらないでしょう」(同)
他方、NHK女性スタッフへのセクハラ行為が発覚し、長年番組を仕切ってきたプロデューサーが異動となったことで、例年以上に波乱となりそうなのが『NHK紅白歌合戦』だ。
11月上旬現在で確定しているのは、総合司会はウッチャンナンチャンの内村光良、白組司会は嵐のメンバー櫻井翔、紅組司会は広瀬すずが決定したことだが、こうした中、業界内で注目が集まっているのは、あの大御所歌手の復活だとか。
ジャニーズゴリ押し中のキンプリ。今年の暮には滝沢秀明とのコラボレーションを目にすることができるのか?
「和田アキ子が復活するとしたら今年しかない。デビュー50周年という節目に加え、朝ドラ『西郷どん』の主役・鈴木亮平や、来年1月より始まる大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に出演が決まった綾瀬はるから、事務所の後輩たちがNHKに貢献。さらに、実質的に彼女を落選させた、因縁のプロデューサーも番組編成から外れました。50周年企画として東海地区を中心に活躍するBOYS AND MEN研究生とコラボし、5月にリリースした『愛を頑張って』はオリコンの週間シングルランキングで2位。自身最高位を記録するなど追い風が吹いています」(同)
2年前の紅白落選以降、NHKとは絶縁状態になっていた和田だが、今年6月、同局『うたコン』【1】にボイメン研究生と共に出演、同曲を披露するなど関係修復の動きも見られ、平成最後の紅白に復活の可能性は想像以上に高そうだ。
「NHKへの貢献でいえば、ドラマなどへの出演もそうだけど、紅白の中枢を担っているスタッフが手がける『うたコン』への出演は非常に重要。ある男性ユニットは、紅白出場のために、これといったシングルのリリースなどのタイミングがないにもかかわらず、無理やりスケジュールを開け、強引に番組に出ていましたよ」(同)
『キンプリ』
ジャニーズ事務所に所属するユニット・King & Princeのこと。今年5月にCDデビュー。ジャニーズの次世代エースとして注目を集めている。
そして忘れてはならないのがジャニーズ事務所。中でも今年いっぱいで芸能界を引退し、ジャニー喜多川社長の後継者としてプロデューサー業への専念を宣言した滝沢秀明である。すでに今井翼とのユニット・タッキー&翼は9月に解散しており、今井の体調不良もあって、一夜限りとはいえ復活は難しそうだ。そこで取り沙汰されているのが、ジャニーズがゴリ押し中のKing & Princeとのコラボ出演だという。
「次世代エース候補のキンプリはなんとしても出したいところ。大手のユニバーサルミュージック内専門レーベルという案件で、出場は堅そうです。そこに滝沢とコラボさせることで、一気にお茶の間の知名度も上げていこうという狙いでしょう」(前出・レコード会社スタッフ)
本誌が発売される頃には、紅白歌合戦の出場者がNHKにより発表されているかもしれないが、年末の音楽イベントにはこうしたしがらみが渦巻いているのだ。
(編集部)
【1】『うたコン』
NHKによる歌番組。J-POPから歌謡曲、演歌まで、あらゆる世代が楽しめる番組づくりだが、一部ファンからは「対象年齢層が広すぎて、カオスな番組」という評価も。